急降下爆撃機の集中攻撃を浴び、燃え続けるも尚海上に居続けようとする航空母艦・飛龍。
その側面に第10駆逐艦隊・巻雲の魚雷が。
巻雲艦上から敬礼の姿勢を崩さずこれを見つめる主人公・北見中尉(夏木陽介)。
「これが戦争だ…これが戦争だ!」
沈みゆく飛龍にエンドマークが被れば、戦意高揚映画としては上出来だったかもしれません。が、ここで終わらなかったのが本作の底力。
「ハワイ・ミッドウェイ大空海戦 太平洋の嵐」
(1960年/松林宗恵監督)
真珠湾攻撃からミッドウェイ海戦まで、ありがちな人間ドラマを極力廃して、戦闘シーンで綴った太平洋戦記。
実物大の飛龍、零戦のセット、13mを越えるミニチュア(自走する!)。後に『ミッドウェイ』でも借用された円谷英二入魂の特撮。
真珠湾奇襲で凱歌をあげた日本軍は太平洋を席巻、大一番のミッドウェイへ。
しかし、情報の錯綜、爆撃機の装備を魚雷→爆弾→魚雷を付け替えるタイムロス。結果、大敗。
身体を船に縛りつけ、飛龍と命運を共にした加来艦長(田崎潤)と山口多聞(三船敏郎)。二人が海底で(つまり死者として)戦争についてしみじみ語る。何という前衛。
ラジオではミッドウェイ大勝利を告げる大本営発表。
そして生き残った者たちは、家族との連絡も許されず軟禁。やがて“口封じ”の南方転属命令が。
『大地の見納めに旋回します』
『無用だ。編隊を組め』
九死に一生を得た後、死地に赴く主人公らの機影。前半のイケイケムードに冷や水掛けるエンディング。
監督は元海軍士官で浄土真宗の僧侶。常にフィルムに仏心を焼き付けることを心がけていたそうです。