デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

スクリューが回らなかったら、手で回して突っ込め! 人間魚雷出撃す

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『大概、いつの出撃でも、1本や2本おめおめと帰って来る。こんな搭乗態度だから帰って来るんだ。鉢巻きを締め、日本刀をかざし、全員に送られて得意になって出ていくだけが能じゃない!出ていく以上、戦果をあげなければ何にもならん!
 スクリューが回らなかったら、手で回して突っ込め!

昨年はスルーしてしまいましたが、今年はやります。恒例8月15日。

「人間魚雷出撃す」(1956年/吉川卓巳監督)

 

石原裕次郎長門裕之など日活若手スターによる青春群像劇。

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原子爆弾の核部分をテニアン島に運んだ帰りの重巡洋艦インディアナポリスを撃沈した伊58潜水艦とこれに搭乗した回天多聞隊4名の物語ですが、原作とも言うべき資料は、

  1. 伊58の艦長・橋本以行による「伊号58帰投せり」
  2. 伊56の軍医・齊藤寛による「鉄の棺」
  3. 回天搭乗員・横田寛(クレジットは横田実)による「人間魚雷生還す」

の3冊。これらの史実をシャッフルしてフィクションも交えつつ、伊53,56,58号による多聞隊の回天作戦が描かれていきます(実際は56号に乗ったのは多聞隊できなく多々良隊)。

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大勢に見送られて出航する伊58号


『軍医長だから言ってしまいますけど、今の日本はこんなことで救われるんでしょうか』

『さあ。私も分からない』

『私は学生時代にスポーツをやってたんですけど、こういうことは戦いの邪道だと思うんですよ。しかし、もう、しなければならないと思うようになりましたよ…しなければね』

もはや良いも悪いもない。ただ生きて帰ってはならないという強迫観念。

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機器の故障や視界不良で出撃の機会を得られない黒崎中尉(石原裕次郎)と今西一曹(長門裕之)。既に二人の仲間は逝った。

『艦長、わたくしはもう帰りたくありません。絶対に帰りたくないんです。どうか本望を遂げさせてください…お願いします』

駆逐艦と遭遇し、深度100mで100発を超える爆雷を浴びる伊58。

『酸素の放出した方が良いと思います。炭酸ガスが4%を超しております』

軍医長の進言により艦内に放出される酸素。窒息一歩手前からぎりぎりの生還。

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(酸素放出の描写ってちょっと記憶にありません)

爆雷の波状攻撃で後部浸水甚大。このまま沈んでは元も子もない。

こうなったら手動で…。

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『黒崎中尉!』『お世話になりました』『黒崎中尉!』

森雅之演じる橋爪艦長はじめ、艦を仕切るスタッフが凛々しくも飄々としており実に魅力的。

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水雷長の安部徹、航海長の西村晃、先任将校の浜村純。

冒頭のワシントン軍事裁判の通訳として岡田真澄長門裕之の病床の弟役で津川雅彦が。美形をちょい役で使い潰すあたり好感が持てます。

★ご参考~回天関連作品2本。 

 

★ご参考~イ号の知られざる裏面史 

 

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★本日のTV放送【21:00~BS-TBS

※ある意味(8/15に)相応しいと言えなくもない…かもしれない 

 

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★★★★★★★★★★★ STOP PRESS!★★★★★★★★★★★

団長、死す(泣)

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渡哲也さんがお亡くなりになりました(なっていました)。

8月10日。肺炎。78歳。

追悼は別途日を改めて。ご冥福をお祈りいたします。