『自分を誇ることなどできない…。自分の良心に気付いておきながら、子供達を国の都合のいいように指導し、壁を破壊するよう命じた。ようやく気付いた…。あの子供達がただ普通に生きることができたら、俺は…どんなに嬉しかったか』
『あんたにできなくても、俺はあんたを誇りに思うよ。きっとその子供達も同じだ』
『…ありがとう。ところであんた名前は?』
歴史の捨て石として死に場所探すおっさん二人。
互いに殺しあう事しかできなかった敵同士。最初で最後の会話は名乗り。
今回一番グッときた場面です。
「進撃の巨人/単行本第32巻」
(2020年9月9日発売/諌山創著)
全人類を根絶やしにすべく「地鳴らし」を発動させたエレン。
壁の頸木を解かれた巨人の群れはパラディ島を除く全世界を蹂躙、全ての命、全ての文明を一木一草残さず薙ぎ倒し踏み潰し、この星が巨大な平野となるまで止まりません。
地球規模のジェノサイドを阻止するために結集した生き残り部隊(調査兵団残党+義勇兵残党+マーレ軍残党)。
「世界を救いに行く!」この胸熱展開にてっきり32巻は疾風怒濤のクライマックス釣瓶打ち…なのかと思いましたが、事はそう簡単には…。
たった今まで殺しあっていた連中が突然一枚岩になれるはずもなく。
遺恨・思惑・感情入り乱れる彼らをまとめたのはマルコ死に際の一言。
『俺達はまだ話し合ってない』
嗚呼、ここでマルコかよ。
エレンを追うにはアズマビト家の飛行艇が必要。しかし、飛行艇が係留されている港はフロック率いるイエーガー派に占拠され…。
無血で奪取か、根こそぎ掃討か。
『俺達は人を助けるためにここにいるんだぞ!? なのに…まずやることが島の連中の皆殺しかよ!! どうしてこうなるんだよ!?』
自身の正義に揺れるコニーら。彼らに比べてフロックの迷いの無さといったら…。
良くも悪しくもジャンにはなれなかった冷徹なリーダーの姿がそこにありました。
一方エレン。地鳴らしの速度は思いの他速く、もはやアニの故郷は救う術無し。
巨人の上陸を阻止すべく結集した世界連合艦隊も鎧袖一触で海の藻屑。
遂にマーレ上陸を果たした巨人軍団は進撃を開始。
『駆逐してやる。この世から…一匹残らず』
かつて巨人に浴びせたエレンの呪詛。同じ台詞が今は違う意味に聞こえます。
『なぁ? 向こうにいる敵…全部殺せば…オレ達、自由になれるのか』
初めて海を見た日、その向こうに敵がいると知った日、あの日からエレンの腹は決まっていたのでしょうか。
ヒストリアに触れた瞬間に見えたもの。 予告され、エレンが選んだ未来のビジョン。そこには一体何が映っていたのでしょう。
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★本日9月17日はブライアン・シンガー監督の誕生日(おめでとうございます!)。
私的代表作はやはりこれ(「ボヘミアン・ラプソディー」は3回生まれ変わっても観ないと思います)。