『これが…自由だ。ついに…辿り着いたぞ。この景色に。なぁ、アルミン』
雲の上で晴れやかに両腕を広げる少年エレン。
しかし、その足元で展開されている景色は…
「進撃の巨人/単行本第33巻」
(2021年1月8日発売/諌山創著)
諌山さんって人、「描きたいコマ」と「物語の進行上、仕方なく描いているコマ」の力の入れ具合が極端で「スゲー!」と「あれ?」が綯い交ぜになっている面白い作家さんです。
今回はいつにも増して「描きたいコマ」が多かったようで、お話の展開よりも画集をめくる感覚が強くなっています。
世界の全てを根絶やしにするために発動された「地鳴らし」(これって「地均し」でもあるんでしょうね)。
守るべきはパラディ島の自由のみ。海も大地も蹴散らして進撃する巨人の群れはパラディ島を箱舟に見立てた大洪水のよう。
極東の島国も巨人に蹂躙され…。
既にマーレの大半は血肉と瓦礫を養分に耕作された平地となり、後を追うガビやアニらにとって「家族を救う」という目的は叶わぬ夢。
ならばせめて「人類を救う」という大義だけは果たしたい。
104期訓練兵も調査兵団もマーレ陸軍エルディア人戦士隊も半マーレ派義勇軍もその両手は血糊べっとり。英雄足りえず、贖罪叶わぬ罪業人である自覚。
『俺はお前と同じだよ、ライナー』
かつてエレンが放ったのと同じ台詞がジャン、コニーからライナーへ。
互いの立ち位置を理解して尚、止まらず進み続けるエレン。エレンの息の根を止めてでも虐殺を阻止しようとする仲間たち。
飛行艇の修復と離水のための時間稼ぎでひとり巨人の群れに挑むハンジ。
『わかるだろリヴァイ、ようやく来たって感じだ…私の番が。今最高にかっこつけたい気分なんだよ。このまま行かせてくれ』
後を託したのはアルミン。
『調査兵団団長に求められる気質は理解することを諦めない姿勢にある。君以上の適任はいない。みんなを頼んだよ』
最期の最後まで巨人萌えなハンジさん、最高です。
ギリギリの燃料でエレンに追いついたアルミンら。気合で復活リヴァイも含めて最初で最後の総力戦。
それはサタン率いるデーモン軍団と不動明率いるデビルマン軍団のアルマゲドンにも似て…。
『エレン、もう一度質問させてくれ。「君のどこが自由なのか」って。そこから引きずり出した後…』
次巻、ついに最終巻。発売は5月か6月(どっちだよ!?➡6月でした)。
★33巻を完全映像化した「完結編-前編-」はこちら。
★大団円の最終巻はこちら(極力ネタバレは無しで)。
★本日1月14日はフェイ・ダナウェイ(1941~)の誕生日(おめでとうございます!)、そして、ピーター・フィンチ(1916~1977)の命日。
なんという神がかりな偶然。天使の悪意か悪魔のユーモアか。
ご紹介は勿論この1本。