『落ち着け!心配するな。生き返ったわけじゃねえ。…化けて出てきただけだよ』
うだつの上がらぬまま30代も半ばを過ぎてしまったチンピラ神原二郎(本宮泰風)。
かつては武闘派として鳴らしたものの今は病弱で見る影もない若頭(田口トモロヲ)から二郎に下った極秘の指令。
敵対組織・兵頭会の中心人物、鬼島(小沢仁志)のタマを殺って来い。
計画は成功。死体はブルーシートに包んで山中に埋めて線香あげて南無阿弥陀仏。
一件落着と思いきや、二郎の前に埋めた鬼島がコンニチワ。
あんた…一体…!?
「死神の刃(やいば)」(2010年/辻裕之監督)
死んだ小沢が里帰りと言えば「実録外伝ゾンビ極道」ですが、今回はゾンビではなく生粋の幽霊。建て付けだけで言えば「超極道」に近いと言えます。
面白いのは、化けて出たとか言っている割に自分を殺した二郎に親切な事。
耳元でこっそり立ち回りをアドバイス。
今回の一件を一千万で手打ちにしようとする仲介役の長老(多分幾ばくかチョロまかす)を前にして、
『“お言葉ですが、その金、もし払わなかったらどうなりますか?”って言え』
組に金がないことは分かっていますし、こっちにノルマ分配させられても困るので、言う通りにしたら一目置かれる事に。
囁きに従うと全てがうまくいき、株が上がって人望集まり。
幽霊は未来予知も出来るようで、競馬の勝敗もアドバイス。
『来ねえぞ3番は。落馬するから。信じろ。必ず落馬する。それより俺の言う馬に突っ込め。お前の手元にある70万な、確実に数百倍になるんだぜ』
結果は…『420倍…8,400万』
この金を元手に潰れかけのキャバクラひとつ譲り受けたら売り上げ堅調シノギ倍増。経営スタッフとしても重宝がられるわらしべ極道に。
何故、こいつは自分を殺した奴にこうも肩入れするんだ?
基本、鬼島の姿は二郎以外には見えないのですが、たまに見えてしまう人も。見えた人はその後決まって…。
田舎から出てきた二郎の母親は鬼島にお茶を出し、二郎がいつもお世話になっておりますと丁寧な挨拶。
『!…見えますか(私が)?』
『耳は遠くなりましたが、目は昔からいいんです』
呆気にとられる二郎。
『どういう事だ?』
『わかるだろ?そういう事だ』
母親は癌でした。鬼島を見た者は確実に死ぬ。待てよ、俺は最初から鬼島が見えているぞ。俺はどうなるんだ。
疑心暗鬼。不安に駆られた二郎は禁断のシャブに手を。
『こいつでお前を殺そうとしている奴を殺せば、そいつが身代わりになって、お前は助かる』
鬼島が懐から取り出したドス。銘は「死神」(分かりやす過ぎる!)
本宮泰風のやたらオーバーリアクションな驚き方が、逆に自然でいい感じ(自分も「うわ、びっくりした!」とか声に出して言ってしまうクチなので、よく分かる)。
細かく張った伏線を綺麗に回収して終わる小粋な作品でございました。
★ご参考①~地獄の底から小沢仁志
★ご参考②~あの世の果てから哀川翔
★本日のTV放送【13:00~BSプレミアム/プレミアムシネマ】