『まぁ、あれくらい突き抜けた生き方できりゃ、極道として本望かもしれねえけどな』
『誰のことです?』
『ん?こいつ見てて思い出したんだけどな…この話、長ぇぞ』
シマ内のクラブで暴れていたために組事務所でボコられている若者。
袋にされても折れないその若者を見て、何かを思い出し、ぽつりぽつりと昔話を語りだす東郷組三代目組長・辰巳悠悟(小沢仁志)。
それは狂犬と呼ばれた男、牧川組若頭・鰐淵市蔵(本宮泰風)の生き様・死に様。
「狂犬と呼ばれた男たち カリスマヤクザ」
(2017年/浅生マサヒロ監督)
お馴染みのメンバーによる国盗り狂想曲ですが、演出家がいつもと違う分手触りも。
襲撃された組長(渡辺裕之)の盾になって死んだ先代若頭(中野英雄)。
返しの先陣に立った鰐淵は直接相手の組事務所に殴り込んで皆殺し。
手打ちの代償に差し出された子分を死ぬまで殴り、泣いて命乞いをしてきた組長には実弾のプレゼント。
この功績が認められて若頭に昇格した鰐淵は相手構わず状況問わず勿論空気などびた一文読まず、ただひたすら兄貴の遺言『組を、組長を守れ』を実践するため大暴れ。
想うのは兄貴のことだけ(舎弟は兄貴より先に箸をつけてはいけない)。
その矛先はたとえ相手が日本最大組織・大和組であっても変わらず。
悶着起こしたのは大和組の枝の枝でしたが、知った事かとばかりに即壊滅(組長だけは逃げ延び)。
ひとつ上の枝はこの事を本家には知らせず(知らせると話が雪崩式にデカくなってすげー金が掛かる)、自分たちだけで収めようと画策。
この枝である風早組の組長が赤井英和、その側近(若頭?)が小沢和義。
小沢和義は相変わらずの存在感ですが、赤井英和が緩い。
脳みそ皺伸びっきりつるっつるって感じで迫力ゼロ。
「どついたるねん」「王手」の頃が嘘のよう(それは演出した阪本監督にも言える事ですが)。
狡猾かつ非道な物量作戦を仕掛けて来た風早組。次々に組員屠られ牧川組は一気にジリ貧。
日本刀によるカチコミのBGMがクラシック風ピアノ曲という辺り、殺伐の中にもしっとり感があっていい感じ。
割と狡すっからい役が多い渡辺裕之も今回は男を魅せています(結構儲け役かも)。
「狂犬と呼ばれた男たち」シリーズは本作が1作目。いずれ折を見て2作目(話が続いているわけではない)も。
★オーラを纏った赤井英和を観たい方はこちら。
★本日6月13日は「ナチス・ドイツがV1飛行爆弾によるイギリス攻撃を開始した日」(1944年)。
V1飛行爆弾と言えば…。