『娘さんですか?』
『ええ。ですが…8年前に死にました』
『もしかして、降霊術を…』
『ええ、しましたよ勿論。娘に会いました。
ですが…問題はその後なんです』
家族がちょっと目を離したすきに息子溺死。
お父ちゃんは現実逃避(特に家族から)、お母ちゃんは過去に執着(お姉ちゃん感情不明)で一家分解。
テンパリ放題テンパッたお母ちゃんは降霊術にすがって息子の霊を…。
「ファンタズム」(2014年/武田真悟監督)
恐れ多いにも程があるタイトルですが、トールマンは出てきません。
恐らくこっちはFANTASM(知覚の中にしか存在しないもの、気味悪く現れている人影)なのでしょう(あっちはPHAMTASMで「幻想、幻覚」)。
お母ちゃんが呼んだ降霊術師・斉藤は怪しさ1万馬力の微笑みデブ。
息子・拓海の霊を降ろして『暗いよ~寒いよ~寂しいよ~お母さ~ん』。
恐山のイタコ並みの演技力ですが、お母ちゃん即シンクロ。
『もう寂しい思いはさせないからね。もうすぐ会いに行くからね』
最初のうちは『変な事考えては駄目ですよ。死んでも拓海くんには会えません』とか正論かましていた斉藤ですが、何故か帰り際に突然の宗旨替え。
『本当に会いたいですか?拓海くんに』
斉藤が授けた秘術、それは心霊スポットに於けるお母ちゃん単独降霊術。
彼岸と此岸の境界に選ばれたのは神戸隧道。「こうべ」ではありません。「かのと」。東京都西多摩郡檜原村。
卒塔婆がひらひらと中を漂っていたり、女性の不気味な声がするなどの霊現象が報告されている心霊スポットですが、一番の危険はツキノワグマだそうです(命懸けだな、ロケ)。
選ばれた理由は都内という利便性、「ノミ1本で切り出しました!」的な壁面の素掘り感、そして中央部が大きくカーブしているために出口が見えない(夜なら闇の奥に飲まれる感じがCG無しに表現できる)と言ったところかと思います。
ここで禁断の降霊術に挑んだお母ちゃんは…。
う~ん、ホラーというよりは家族の絆みたいなものを考える教材を目指した感じなので怖さは全くありません。
父・夫、母・妻、姉・娘という立ち位置から考える家族とは?…というほど踏み込んでもいない(もの凄くステレオタイプ)ので、喰い足りなさひとしお。
心霊現象に辻褄も糞もありませんが、もうちょっと腹に落ちる展開にしてほしかったとも思います。
禁断の降霊術を素人に伝授して立ち会わない降霊術師というのも如何なものかと。
降霊後に除霊をしなかったから、色んなものに憑りつかれてしまったという説明も説得力があるようなないような…やっぱりないな。
その除霊の方法も…そんな事、実の母に出来るわけないだろ。そもそもちゃんとやり方教えたのか?
最後のオチもスッキリしないし…結局除霊してないし(「悲劇のハッピーエンド」と呼べるほど、綺麗にまとまっているわけでもない)。
「第9回福井映画祭<長編部門>グランプリ」「第8回田辺・弁慶映画祭<コンペティション部門>入選」だそうですが、モヤモヤだけが溜まる72分でした。
「カルト」って良く出来た映画だったんだなぁ…。
★あと「トンネル」と言えば…
★ついでに国内禁忌エリアもちょっとだけ。
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★本日11月28日はエド・ハリス(1950~)の誕生日(おめでとうございます!)。
「ライトスタッフ」も「アビス」も「ザ・ロック」も素晴らしいですが、最も心に刺さったのはこの2本。