『折角帰って来たので、霊的な現象を捉えた映像に加え、オカルト専門家による怪談、UFO研究といった未知なる領域まで切り込んでいくことにする』
≪もっと盛ろう≫ 確かにそう言いましたよ。「監死カメラ2」のレビューの時に。
でもそれは、あくまで「心霊ドキュメント」のスパイスとしてフェイクを盛ろうと言う意味であって、こういう「学祭ノリのオカルト笑点」みたいな方向に舵を切れという意味では…。
大体「折角帰って来たので」の「折角」って何だよ。
「帰ってきた監死カメラ」(2019年/寺内康太郎、賀々賢三監督)
≪承認欲求を煮〆た自己中モンスター≫菅野がドアップで登場する冒頭から「違う」感満開。
まあ、アニメ伊藤潤二『コレクション』が第1話に「双一の勝手な呪い」を持って来たのと同じインパクト狙いなのかもしれませんが、ここでドン引きした人も多かったのでは。
しかも、やっている事が「フライングヒューマノイドとUFO」の探索(どういうルートで入手したのか分からない目撃写真の検証)。どこが監死カメラやねん。
結局、情報提供者とは連絡とれず、山奥の廃墟で出会ったデビュー前Youtuber見習いみたいな奴(レイキンさん)に先輩風をびゅんびゅん吹かすという目的も手段もはき違えた展開。
最後は悲鳴を残してレイキンさんが失踪。
えっと…フライングヒューマノイドは?
後半は更に凄いよ。
≪心霊コーディネーター≫を自称する青木が小遣い稼ぎに持ち込んだ1枚の心霊写真。
青木にガセネタをつかまされた事もあるスタッフは最初から半信半疑(と言うか全く信用していない。適当にあしらってとっとと帰ってもらおう感全開)。
その場の空気を感じ取ったのか青木は独自に調査を開始。
心霊写真は知り合いのJCのSNSアカウントに無断投稿されたどこぞのJKの卒業式のスナップのようで、当のJCは写っているJKに心当たりはないと言う。
青木は制服から高校を特定して生徒に聴き込みをしようとしますが、あからさまに不審者なので警察に通報されそうになって遁走(当たり前だ)。
その後、青木は執念で不正ログインの形跡を辿って、無断投稿した犯人のものと思われる個人サーバを特定。そこにあったホームページ「闇の卒業アルバム」に辿り着きます。
そこにはいじめの被害者による告発と両親に宛てた遺書のような別れの挨拶が。
最終更新日は2004年4月8日。15年間放置。
「日記」と題されたコンテンツ部分に列挙されているいじめの加害者の中に今回の依頼者であるJCと同じ苗字が。
いじめの加害者は依頼者の母。そして被害者(の霊?)が加害者の娘のSNSに不正ログインして心霊写真を投稿したという事か。
ここでトップページに戻ったら最終更新日が2019年4月20日(つまり今日)になっているじゃありませんか。
「日記」となっていたメニューも「画像」に変更。
クリックで出てきた画像は、今PCを覗いている青木とスタッフ。その背後に人影。
その人影は徐々に近づいてきて…。
ヤバイ、ヤバイでぇ。ビビった青木は事務所のブレーカー落として強制終了。
駄目だ、もう手に負えん、専門家に頼もう。
このシリーズではご意見番としてお馴染みな、オカルトショップ魔術堂の店長にしてオカルト研究科のKATOR(カトール)が登場。
しかし、自分は何もせず、「適任者」を紹介してバックレ。
彼の口利きでやって来たのが…デジタル霊媒師・高徳院紫龍。
心霊コーディネーター→オカルト研究科→デジタル霊媒師。
≪怪しい≫のバトンリレー。オカルトわらしべ長者です。
霊を呼び込んでしまったPCのデジタル除霊。お値段、特価で30万円!
奥で話を聞いていたスタッフも思わず仕事の手を止めて…。
見るからにテキトーな結界を張った高徳院が除霊を開始。しかし、霊の本体が死んだJKではなく、そのお腹にいた赤ん坊と判明。
『水子…ですか』とつぶやいた高徳院は鞄から秘密兵器を…ってそれ魔法少女とかが使うマジカルスティックじゃございませんこと?
ピロピロピンと軽快な電子音を鳴らしながら、空海の五鈷杵(ごこしょ)のようにマジカルティックを振り回して除霊再開。
トドメは何とアンチウイルスソフト「ノートン」のインストール(しかも1回失敗してる)。
『このノートンアンチウイルスが完了した段階で一連の儀式は終了という事になります』
何と有難い、ご利益溢るる除霊!メリン神父もカラス神父もラモント神父も裸足で逃げ出してしまうでしょう。
この辺りになると笑いのツボに入ってしまい、妙な脳内物質が出て笑いが止まらなくなってしまいました。
恐るべし監死カメラ。
DVDパッケージ。完全にジャケット詐欺。
★ご参考
★本日1月26日はエドワード・G・ロビンソン(1893~1973)の命日(黙祷)。
「シンシナティ・キッド」も激渋ですが、印象一番は没年の遺作となったこちら。