デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【還暦越えだから通じる】ザ・フォーリナー/復讐者【ジャッキーの肉体言語】

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大昔、とある国際的ボランタリー・チェーンの末端にいた時のお話。

ヨーロッパ中心のこの組織は毎年加盟国代表が一堂に集う国際会議を開催し、その運営は加盟国の持ち回りとなっておりました。

参加者には胸に国名の入ったプレート(我々なら「JAPAN」)を付けてもらうのが習わし。

日本がホスト国となった年、国際本部の作ったリストに基づいてイギリスには「ENGLAND」のプレートを渡したのですが、これにクレームが…。

事務局にやってきた二人組の老紳士は静かに、しかし力強く宣言しました。

『俺(の国)はスコットランド、こいつはウェールズだ。断じてENGLANDではない!』

英国の人種問題に触れたのはこの時が初めて。

交渉の結果、プレート表記は「UK」に落ち着きました。

UK- United Kingdom of Great Britain and Northern Irelandグレートブリテンおよび北アイルランド連合王国

気になるのは最後にドドンと自己主張している北アイルランド

領土問題と民族主義と宗教対立が複雑に絡み合って武力闘争に発展した北アイルランド問題。

もしあの時のクレームの相手が北アイルランド人だったらと思うとちょっとチビチビなものがあります。

「ザ・フォーリナー/復讐者」

 (2017年/マーティン・キャンベル監督)

 

クワン(ジャッキー・チェン)はロンドンで中華レストランを営む英国市民。

娘がプロムで着るドレスを買いに行った際に爆弾テロに遭い、ひとり娘が死亡(過去に色々あって他に家族は無し)。

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北アイルランド解放を謳う過激派組織が犯行声明を出しますが、警察は犯人に辿り着く気配なし。

クァンは、かつては過激派組織の活動家でしたが現在は北アイルランド副首相となっているリアム・ヘネシーピアース・ブロスナン)の元に押しかけ、犯人の名前を教えろと迫りますが、暖簾に腕押し。

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会ってくれた事を感謝したクワンはそのまま階下のトイレ(個室)に入ると、持っていた日用雑貨で小型爆弾作成。躊躇なく爆破。

直後にリアムに電話をかけて『考え、変わった?』

ヨタヨタと歩き、オドオトと話す、決して笑わぬ還暦越えジャッキーが実に新鮮(でもヤル時はヤル)。

その後もリアムが避難した田舎の牧場も爆破。追手は森に誘い込んでブービートラップ

「お前もかよ!?」な設定ではありますが、クワンは元特殊部隊。

リアムが入手した資料には「Sapper battalion」「promoted to platoon leader」「A Quan was a one of the most deadly fighters」などの表記に加え「CAPTURED(捕虜となった)」の文字も。

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米軍特殊部隊所属という言い方をしていましたが、正確には米軍の技術支援を受けていたベトナム共和国陸軍特殊部隊出身のようです。

森の中を我が家のように動くクワンは完全にランボーランボー同様、相手を傷つけても命まではとらない)。

まさかジャッキーが還暦過ぎてシュワ(「コラテラル・ダメージ」)×スライ(「ランボー」)をトレスしようとは。

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手近なもの(車)でトレーニングは「ロッキー」か。

本作が面白いのは、ジャッキー一本被りではなく、過激派組織(日本・中国公開版ではUDIという架空の組織になっていますが、英語圏公開版ではちゃんとIRAになっている…らしい)の内部抗争(ハト派タカ派)、北アイルランドと英国政府の駆け引き、警察との裏取引といった大人の事情を描き込んでいること。

最後にNG集をつけなかったのは「よく我慢した!」でしたが、〆で1曲歌うのは我慢できなかったようです(笑)。

★笑わないジャッキーと言えばこれ(お薦めです!)。 

★ついでといっては何ですがこちらも…。 

★もうひとつ、忘れちゃいけない異色のジャッキー映画を… 

★あと最近のピアース・ブロスナンも。 

 

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キム・ギドク監督がお亡くなりになりました。12月11日、新型コロナウイルス感染症のため訪問先のラトビアで。59歳。

ご冥福をお祈りいたします。