デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【Jホラーの試作/原型】邪願霊【小中理論実証実験第1弾】

f:id:zombieito:20201109152444j:plain

Jホラーの鏑矢と言われた「女優霊」に先んじる事6年。

ついでに言えば現代型モキュメンタリー(全編POV)の始祖「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」に先んじる事10年。

Jホラーの試作にして原型がここに。

「邪願霊」(1989年/石井てるよし監督)

 

ビデオテープ発売時のタイトルは「サイキックビジョン 邪願霊 ~狙われた美人キャスター~」

サイコなマイケル・アイアンサイドが病院に熱いお見舞いをかましてくれる映画みたいで全く内容を言い当てておりません。

デビュー間もないアイドルの新曲発表プロジェクト、その密着取材映像、という建て付けの “なんちゃってドキュメンタリーホラー”です。

序盤は正にアイドルのプロモーションはこう進んでいくんだぜ、なドキュメンタリー口調。

アイドル役には86年にポスト菊池桃子としてデビューした佐藤恵美が実名で登場。

f:id:zombieito:20201109152827j:plain


打ち合わせ会議室にはデビュー曲「キャンバスの恋人」のポスターまで貼ってある念の入れよう。

彼女の新曲「ラヴ・クラフト」の発表に合わせたプロモーションを仕掛けて、従来のアイドルアイドルした路線から脱皮するというのが事務所とレコード会社の狙い。

「ラヴ・クラフト」というタイトルに「あーこりゃお好きなやつがスタッフにいるぞ」と思ったらいましたいました。

構成・脚本/ヴィジュアル&サウンド・デザイン:小中千昭


なるほど、これは小中理論の第1回実証実験というわけですね。

作詞家、編曲家、ボイストレーナーなど曲にまつわる人物が次々と登場しますが、肝心の作曲家が出てきません。それどころか作曲家が誰なのか誰に聞いても「え~っとそれはごにょごにょごにょ」。

過去のコンクールの応募作だったらしい、という事までは分かりましたが、当該コンクール入賞作にそれらしい曲は無し。

撮影スタッフが「アイドル密着ドキュメント」から「ラヴ・クラフトの作曲者を探せ」に方針転換した矢先、怪異な現象が次々と…。

中盤までは業界を取り巻く人々も実名で登場させ、ドキュメンタリーとしてのスタンスを強調しますが、いかんせん取材クルーのヘッドが竹中直人

姿はほとんど映りませんが、声が、ね。一言喋っただけで竹中直人ってバレる声ですから、この時点でドキュメンタリー性は崩壊。

スタッフもその事に気付いたのか、中盤以降は開き直ったかのようなエンタメ一直線。

作曲家の鍵を握るディレクターの爆死シーンをワンカットに収めたのを皮切りにクライマックスはPV撮影現場に景気よくポルターガイストが巻き起こってセット倒壊爆発炎上。

f:id:zombieito:20201109152938j:plain


鉄骨ぽきり、人間ぐにゃり。

もはや「怖さって何?」な演出になってしまいますが、ポルターガイストはこれくらい華々しい方が個人的には好みだったりします。

本作観て感じた事は「この子(佐藤恵美)はアイドルとしては大成しないだろうなぁ」という事。声にも動きにも全くオーラを感じませんでした。

もうひとり気になったのが、密着取材のレポーター役を演じていた石山一枝さん(クレジットでは新人)。

この人、劇中挿入歌2曲を歌っています。つまり、彼女も歌手・女優として嘱望されていたのではないかと思うのですが、関わった作品は本作のみ。

追われるアイドルも追うレポーターも花を咲かさぬまま消えていった、と言う事になります。

それはそれで恐ろしい話です。

 

★Jホラーの出発点と言えば… 

★その後の芸能人実名参加のPOVホラーと言えば… 

★因みにマイケル・アイアンサイドが熱いお見舞いをかましてくれる映画は… 

 

 

f:id:zombieito:20201031184951g:plainランキング投票です。よろしければワンポチを。

 

----------------------------------------------------------------------------- 

★本日12月18日はJホラーの立役者・三輪ひとみ嬢の誕生日(おめでとうございます!)。

「D坂の殺人事件」の男装の麗人(小林少年)も捨てがたいですが、やはり代表作はオリジナル版「呪怨」と同年に公開されたこれ。 


★本日のTV放送【13:35~テレビ東京午後のロードショー