『何故、飛行服を着るんです?』
Why Do We Wear Our Flight Suits, Sir?
飛行機に乗るわけでもないのに。
エアコンの効いたコンテナの中で。
飛ばしているのはドローン。遥か1万キロ彼方のアフガニスタンの上空を。
握っているのはヘルファイアの発射ボタン。
指1本で音もなく消し飛ぶ目標物。
これが先制的自衛。それは報復の前払い。
「ドローン・オブ・ウォー」
(2014年/アンドリュー・ニコル監督)
トミー・イーガン少佐(イーサン・ホーク)は元F-16戦闘機パイロット。
今はラスベガス郊外のアメリカ空軍基地で、MQ-9 リーパー無人攻撃機を操縦し、モニターに映るタリバン兵をヘルファイアミサイルで吹き飛ばすのがお仕事。
綺麗に片付けた時の符丁は「GOOD KILL(原題。字幕は「一掃した」)」。
GOOD KILL…いかにもアメリカ人らしい言葉の選び方。
殺しは悪い事だけど、アメリカにとっては良い殺し。
SHIT!(糞!)は汚い言葉だけど、頭にHOLY(聖なる)つければ汚くない、みたいなノリに近い、いや、より質の悪い冗談のように聞こえます。
ピンポイントな暗殺と異なり、ヘルファイアの掃討範囲は「面」。非戦闘員を巻き込むこともありますがそれはそれ。「よくある話」。
生かしておいたら巡り巡ってアメリカ人が死ぬかもしれない。罪のない子供たちが。
9.11はアメリカに「皆殺しの免罪符」を与えてしまったようです。
そら、そんな職場に毎日籠っていたらテンパりますわね。
大空に戻る事を夢想しながら、酒に溺れていくイーガン。
リーパーを遠隔操作するイーガンたちを、更に遠方から操作するCIA。その後方には勿論政府。外道非道の食物連鎖。
今日も新兵がやってくる。ゲーセンでリクルートされ、セスナで僅かな飛行訓練をしただけの、ゲームと実践の区別もつかない新兵が。
MQ-9 リーパー無人攻撃機を扱った作品としては、ヘレン・ミレン主演の「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」がありますが、どん詰まり感はこちらの方が遥かに上(その分、エンタメ性は希薄)。
絶望と焦燥と憤怒と悲嘆を表情だけで魅せるイーサン・ホークが絶品です。
★アンドリュー・ニコル監督のエンタメ作なら…
★イーサン・ホークの演技を堪能するなら…
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★本日6月7日はリーアム・ニーソン(1952~)の誕生日(おめでとうございます!)