昨日ご紹介した「バイバイマン」はその名を口にするだけで、更には誰かが口にした名前を聞いただけでアウトでしたが、こちらは名前を知っただけでアウト。
つまり、「聞く」に加えて「読む」も発動条件に。
知ってはならない禁忌の名前、それは…
「シライサン」(2019年/乙一監督)
温泉旅館で怪談話を聞いた旅行者3人のうち2人が後日怪死。
友人を目の前で亡くした女子大生・瑞紀(飯豊まりえ)と弟を亡くした青年・春男(稲葉友)。
あまりに特異な死に方(眼球が内側から圧迫されて破裂、直接の死因は心筋梗塞)を不審に思った瑞紀と春男はもうひとりの旅行者・詠子(仁村紗和)の存在を突き止め「その名を知ったら死ぬ」という怪談の存在を知りますが…。
というそのまんま「リング」なプロット。
前半の興味の焦点は
- 主人公の二人がどのタイミングでどのようにしてシライサンの名前を知ってしまうのか。
- 目がやたらデカいという情報しかないシライサンはどんな顔をしているのか。
中盤以降は
- シライサンとは何者なのか。
- 呪いの回避もしくは解除はできるのか。
といったところだと思いますが、どれもすごーく微妙。
シライサンの名前は「溜めって何?」と思う間もなく二人同時に知ってしまいます。
シライサンの容姿はなかなかにいい感じなのですが、見せるのが早すぎ。途中で見慣れてしまい、怖いどころか「これってゆるキャラにすれば町おこしに一役買えるんでね?」とか余計な事を考えてしまうくらいキュートな魅力にもうメロメロ(笑)。
前半・中盤は影と遠景だけでラスト近くにドン!と出して終わりにすればインパクト絶大だったと思うのですが。
シライサンの歩き方には「回路」の影響が見られます。
シライサンの出自は最後まで不明。何かそれっぽい匂わせはありましたが、シライサン個人が何者で何故現れて何故殺すのか全く分からず。
そこはかとなく「影鰐」の雰囲気。
「リング」同様、解呪の模索が後半の展開になるのですが、シライサンの出自が分からないので解呪の方法も分からず。
ただ、緊急避難的回避は可能。その方法は「にらめっこ(もしくはガンの飛ばし合い)」。
シライサン、目をそらすとダッシュで間合いを詰めてきますが、見つめている間は近づいてこないという「だるまさんが転んだ」ルールで動いていることが判明。
音を立てなければ存在が知覚されない、というのはよくある縛り(古くは「ヒッチコックの鳥」、最近だと「ドント・ブリーズ」や「クワイエット・プレイス」)ですが、瞬きもせずガン飛ばし続けていれば襲われないというのは新機軸。
しかし、シライサンは終盤、相手の目を逸らせる罠を仕掛けたり、
いきなりゼロ距離で現われるなどの技巧を凝らして来るのでした。
とまあ細かいネタは良い感じに散らしているのに、結びつける演出が残念無念。
この事件を記事にしようとするライターさんも加わって調査を進めるのですが、深掘りを放棄しているので、話が前とか横に転がる事はあっても原因とか理由に一向に辿り着きません。
これで98分は長い。
途中、もう1時間くらい経ったかな、と思ったら30分そこそこで「えーまだあと1時間あるの。ちょっと休憩しようかなあ」と思ったくらい。
手練れの演出家だと何気ない街並み映すだけで何か邪な感覚が伝わって来るものなのですが、この監督さん(まあ作家さんですが)そういう感覚は持ち合わせていないようです。
細かい事言っちゃうと、旅行者3人の内、最後の犠牲者となった富田詠子さんって普通の住宅街の庭付き一戸建てに住んでいるのですが、家族の気配がありません。
娘が首吊り自殺を図って病院に担ぎ込まれているのに親が駆け付けないなんて事は…。
ライターさんが訪ねて行った時も通りかかった女子高生が「富田さん、いませんよ。ちょっと前に病院に運ばれて…」。庭付き一戸建てで独り暮らし?
こういう不自然さって気になって駄目なんです、私。
ラスト、瑞紀の回避方法は読めましたけどアリ。
春男の締めは捻りゼロの安直オチなのでナシ。
説明不足な箇所が多々あるのですが、中でもライターさんの奥さんが謎。
発端の地となった温泉街近くの出身で、シライサンの名前を聞いているにも拘らず生死不明(消息不明)。何より演じているのが谷村美月。モブキャラのわけがありません。
続編作る気だったのかなぁ…。
★ご参考
---------------------------------------------------------------------
★本日7月10日は俳優・土平ドンペイ(1966年~)の誕生日(おめでとうございます!)。
名前聞いてもピンと来ない人、多いかと思いますが、これ👇観たら忘れられなくなります。うなされるかもしれませんが、そこは自己責任で。
★本日のTV放送【21:00~BS-TBS】