デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

ホラーに擬態した神話の模倣。 ザ・ボート

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マルタの漁師が漂流船で難儀な一夜。装いは完全にホラーでしたが…。

「ザ・ボート」
(2018年/ウィルストン・アゾパルティ監督)

 

マルタ島の漁師が小舟で沖へ(周囲は勿論、地中海)。

バレッタの港から岸壁を抜ける景観が美しい。

竿も持たず、釣り糸垂らす(流す)だけのシンプル漁(タコ釣りとかか?)。

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と、突然の濃霧。その中に忽然と現れたクルーズ船。

呼びかけても返事無し。乗り移ってみても人影無し。

無線通じず、エンジン掛からず、コンパス利かず。

気がつけば係留しておいたはずのボート消失。

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設定だけ見ると、間違いなく幽霊船。低予算「ゴーストシップ」か、海版「ザ・カー」か、霧繋がりで「ザ・フォッグ」か、いずれにしてもホラー・ジャンルを想像しますが、その期待は肩透かし。

船はあれこれ悪さをしてきますが、心霊現象的派手さはなく、漁師は船の知識と船内で見つけたツールを駆使してこれを乗り切っていきます。

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とにかく展開が地味なので、幽霊船と戦っているのか、故障船と格闘しているのか今ひとつ掴めません(笑)。

何よりお話に因果というものが存在しないのが、立ち位置を一層不明瞭なものに。

普通は船が幽霊船になった経緯とか、この漁師が選ばれた理由とかが語られたりするものですが、その手の説明一切なし。

そのまま終盤に及ぶに至り、流石にこれはおかしいな、と。

船の名前はAEOLUS(アイオロス)。

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ギリシャ神話にはアイオロスを名乗る人物が3人登場するそうですが、そのひとりが「風の神」(『聖闘士星矢』の登場人物ではない)。

「浮き島」であるアイオリア―島に住み、漂着したオデュッセイアを歓待したそうです。

ああ、これは神話の模倣なのか。

だから漁師は致命傷を負わないし、船内には食料が残っていたりしたのか。

戯れに風の神が漁師とゲーム。

これ見よがしに船名が映った所で気づけよって話ですが、そう思って観れば味わい深い一篇ではあると思います。

 

 

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★本日8月17日はロバート・デ・ニーロ(1943~)の誕生日(おめでとうございます!)

有名どころはちょくちょく引用しているので、今回は比較的最近(つまり歳喰ってから)の作品をひとつふたつ。

★そしてもうひとり、本日はショーン・ペン(1960~)の誕生日(おめでとうございます!)

この人も歳喰って味わい深い役者さんになりました。こちらも比較的最近の作品をひとつふたつ。