『アラン…お前は…絶対に…死ね!』
それは予言でも呪詛でもなく、心からの…。
サイパン地下壕、死の彷徨。
「ゲヘナ~死の生ける場所~」
(2017年/片桐裕司監督)
スクリーミング・マッド・ジョージに師事し、スタン・ウィンストン・スタジオのメイン・アーチストも務めた特殊造形師・片桐裕司の監督デビュー作。
ゲヘナはエルサレム城門外にあったゴミ捨て場(罪人の死体の投棄場所)。キリスト教では永遠の滅びの場所で地獄と同義。
どこかで聞いた単語だなぁと思ったら「アサルト・リリィ」に登場した研究機関の名前でした。
サイパンに一大観光施設を建設するため視察に訪れた開発会社御一行(野心家の女性ポリーナと建設コンサルのタイラー、映像記録担当のデイブと不動産ブローカーのアラン、そして現地案内人のペペ)。
広がりたいだけ広がる緑が何故か禍々しい。
そこかしこに第二次世界大戦の爪痕の残る景観…おっとこいつは…
日本海軍第五艦隊所属、特二式内火艇(とくにしきないかてい、もしくはうちびてい)カミの残骸ではありませんか!
港湾施設が不十分な南方の島々へ潜水艦で沿岸まで運び、その後自力航行し上陸させるという目的の元開発された水陸両用戦車。
「ガールズ&パンツァー 最終章」では知波単学園の戦車として大活躍しておりました。
前後にフロートを付けた側面図と上陸時の雄姿、そしてサイパンに投入されたカミの陸戦Ver.を忠実に再現したプラモデル。
視察中、山間部に謎の横穴を発見した一行。覗けば地下に続く階段が。
勿論、黙って埋めるか塞ぐかするのが正しい選択ですが、野心家のポリーナは調査を主張。アランも崩落の危険性からこれに同調。
仕方なく降りた階段の先には迷路のような地下施設。通路には男女の死体。更にその奥の一室には…
ミイラのような老人がいた!
爺さんは『早くここから出ていけ!』と忠告。そして、死に際に初対面のアランを名指し。
『アラン…お前は…絶対に…死ね!』
爆発音のような地鳴り。暗転。気がつけば通路にも各部屋にも通電されて光が。
さっきと同じ部屋なのにすべてが違う。何もかもが新しい。ここは一体…。
そこは17世紀にサイパンを侵略したスペイン人の一人が原住民に呪いをかけられ、生きたまま屠られた呪怨の地。そして第二次大戦中、その呪いに巻き込まれた日本軍の地下壕。
これがドイツ軍の地下壕だったら間違いなく最終兵器ゾンビがわらわらと出て来る所ですが、やって来たのは各々が抱える「死に別れトラウマ」の人たち(ソラリスだ!)。
果たしてこの無間煉獄(←中国での公開タイトル)から脱出する方法はあるのか。
監督はじめスタッフにもキャストにも日本人が多数参画しているのでトンデモ日本軍は登場しません。
冒頭とエピローグに超特別ゲスト、ランス・ヘンリクセンが。
オチも綺麗にまとまっていて、地味ながら楽しめる出来となっておりました。
★ご参考❶~ゲヘナの解説をちょっとだけ。
★ご参考❷~トラウマ実像器と言えば、
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★本日12月5日は東映特撮最強の鬼監督・東條昭平(1939~)の誕生日(おめでとうございます!)
本日は演出内容も鬼だったこちらを。
★本日のTV放送【19:00~BSフジ/BSフジサンデースペシャル】