全く以て邪推ですが、監督さんの心の中は
「とにかく家族だ!愛だ!そしてエコだ!」
という製作者(お金を出してくれる人)の命令と、
「俺は東宝怪獣映画にリスペクトを捧げたいだけなんだよ~!」
という自身の願望がせめぎ合いぶつかり合い千々に乱れていたのではないでしょうか。
そう思って観ればある意味「奇跡」と言って良いまとまり具合だったのではないかと。
「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」
(2019年/マイケル・ドハティ監督)
本作では怪獣をKAIJUではなくTITANと呼んでいます。
タイタン。天空神ウラノスと大地女神ガイアから生まれた巨人またはその一族。ゼウスが率いるオリンポスの神たちと戦って敗れ、地底に幽閉されたギリシャ神話の神々。
それは黙示録か、ラグナロクか。
…と思うくらい神々しい迫力に満ち溢れておりました。余計な人間さえ出て来なければ。
神話の世界に人類などという矮小な生き物の出番などありゃしないのですよ。
前作(2014年のギャリス版GODZILLA)より多少マシになりましたが、それでも前面にしゃしゃり出てくるのは家族。夫と妻と父と娘と娘と母と。
邪魔。
しかも、このお母ちゃん科学者で、タイタンをコントロールする機械作って、彼らを解き放ち、自然秩序を回復させ、調和のとれた世界で怪獣と共存するとかぬかしやがります。
字幕は怪獣になっていますが、台詞はちゃんとTITANSと言っています。
要するに人類が自然環境を破壊し尽くす前に怪獣に矯正してもらおうと。
どーでもいいです。
ゴジラを前にして環境だのバランスだの人類こそ病原菌などと言い垂れるような奴は黙って全員踏み潰されればいいんです。
大体、水爆実験で蘇って放射能まき散らしている奴に向かって何がエコだ。
お母ちゃん、2014年のゴジラ進行時に息子殺されて以来、何かに憑りつかれたように研究に没頭して「息子の死を無駄にしてはいけない」とか言っているのですが、知ったこっちゃないです。
あんたの息子になんぞ何の興味もありません。家族の問題と人類の命運を秤にかけてはいけません。
因みにお父ちゃんも科学者でしたが酒に溺れ世捨て人になって離婚(☜遥かに人間的で共感が持てます)。
という息子を失った夫婦と生き残った娘の再生の物語です。
この余計なストーリー部分をまるっと無視すれば、最高の神話世界を拝むことができます。
兎に角監督の東宝怪獣映画リスペクトが半端ありません。
火山の火口から飛び立つラドン(劇中呼称はRODANですが)、大地にラドンの影が映った途端、爆風で巻き上げられる家屋、“あの形”をそのままミサイルに詰めたオキシジェン・デストロイヤー。
モスラに寄り添うチャン・ツィイーが代々双子という設定、実はギドラは地球外生物だったという隠し味。
そしてここぞという時に流れるモスラのテーマ、ゴジラのテーマ。
ここまで愛情捧げてくれれば本望でしょう。
極めつけはエンドタイトル。
まずはファンキーにアレンジされたブルー・オイスター・カルトの「GODZILLA」。
続いて「モスラのテーマ」フルバージョン。最後に「モスラ対ゴジラOP」を枕に「ゴジラのテーマ」ががっつりたっぷり。
全ての演奏が終わった後に、坂野義光、中島春雄両氏に対する哀悼のメッセージ。
思わず両手を合わせて拝んでしまいましたよ。
もはや役者の顔なぞ彼岸の彼方。ありがとう、ドハティ。
★文句はないと言いつつ文句垂れたれなギャレス版GODZILLAのレビューはこちら。
★坂野義光という名前にピンと来ない人はこちらを。
★作品レビューはこちら。
★そしてブルー・オイスター・カルトのオリジナル版GODZILLAはこちら(日本語実況入り)。