デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【神秘のベールがあっさりと】 シェラ・デ・コブレの幽霊【恐るべしAmazon Prime】

劇場未公開・国内未ソフト化、1回だけTV放映され、そのあまりの怖さに観た人が戦慄、後年、その放送を観た人からの依頼で「探偵!ナイトスクープ」に取り上げられ、一気に知名度が全国に広がったものの、中身は依然藪の中…。

ホラー好きの間ではタイトルだけが独り歩きしている伝説にして幻の作品がひょっこりアマプラに登場。

え、嘘ぉ!?

神秘のベールがあっさりと…。

恐るべしAmazon Prime

「シェラ・デ・コブレの幽霊」(1964年/ジョセフ・ステファノ監督)

まず、本作が伝説にして幻の作品と呼ばれるようになった経緯を洗っておきましょう。

伝説故どこまでが真実かは分かりませんが、伝え聞く限りでは、

  1. ABC放送局との確執から「アウターリミッツ」を第1シーズンで降板したジョセフ・ステファノが、ライバル局CBSに同様の新シリーズ企画を持ち込んだのが発端。
  2. パイロット版として54分の中編作品「The Haunted」を製作し試写したものの、あまりの怖さに体調悪化者が続出したため、放送どころか企画そのものが没に。
  3. 「The Haunted」にフッテージを追加して1時間21分版の「シェラ・デ・コブレの幽霊」として完成させるもお蔵入り。
  4. が、フィルムは製作資金を回収する目的でアメリカ国外へ貸し出され、日本を始めヨーロッパ各国およびオーストラリアでは「未公開映画」としてテレビ放送(日本では1967年8月20日に『日曜洋画劇場』で「怪奇映画集」として、『ミイラ男の呪い』のダイジェスト版との2本立てという形で放送)。
  5. 2009年8月28日「探偵!ナイトスクープ」で「史上最高に怖い映画」として取り上げられ一気に全国区に。

日本で放送されたのは(通常枠に2本立てという放送時間から考えて)54分版「The Haunted」の方だと思われますが、後に映画評論家の添野知生(そえのちせ)氏が入手し自主上映した16mmフィルム(試写用フィルム15番)との内容相違(結末が異なっているらしい)から「TV放送版と違う」という意見が出て混乱に拍車を掛けたようです。

ちょっと「ゾンビ」(米国公開バージョン)がソフト化された時に「劇場で観たものと違う!」という意見が出たのと似ていますね。

さて、肝心の内容についてですが、主人公は著名な建築家にして建造物修復師ネルソン・オライオン(マーティン・ランドー)。

彼には「心霊調査員」というもうひとつの顔がありました。

今回の依頼人は盲目の資産家ヘンリー・マンドール(トム・シムコックス)。

依頼内容は「毎夜掛かって来る死んだ母親からの電話について調べて欲しい」

本当に心霊現象なのか、幽霊を利用した犯罪なのか。

話の裏にはかつてオライオンが関わった「シェラ・デ・コブレ」という町で起きた幽霊によるアメリカ人女教師殺人事件が…。

現在の目で見れば(少なくとも体調不良になるほどには)怖くはありません。

ただ、幽霊(当初は母親のものと思われていましたが実は…)のネガポジ反転させた絵面はいかにも「黒い血を浴びた」ように見えて不気味。これがドアップで迫って来たら子供は間違いなく泣くでしょう。


加えて幽霊の悲鳴とすすり泣きと絶叫と笑い声をミックスしたような声が絶妙。この声にあの顔が被さったら子供は確実に眠れなくなるとは思います。

個人的に惹かれたのはオライオンの自宅。

海岸に突出した形はSFチックで、いかにも建築家の建てた家という感じがします(外観だけ借用して中はセットなんだと思いますが)。


昨年、突発的に(しかも2Kレストア版で)発売された北米版BDには、本編に加えて「The Haunted」も収録されているようです。

ちょっと見比べてみたいですね。

※右が北米版BD。左は偶然見つけた謎の着色写真。

★ご参考

監督のジョセフ・ステファノは「サイコ」の脚本書いた人。「サイコ」以外で脚本に参加した作品が、

 

 

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★本日6月9日は金子修介監督(1955~)の誕生日(おめでとうございます!)
昨年は「ガメラ3」「大怪獣総攻撃」という迷走2本立てをお送りしましたが、今年はこの2本で。

 

★本日のTV放送【13:40~テレビ東京午後のロードショー

※放送は「PART2」の方です。