飛行場滑走路の拡張工事のため取り壊しが決まった刑務所。
囚人(832人!)は全員新居にお引越し。
つつがなく全員を送り出した所で所長のヤヘド少佐に栄転(警察署長!)の内示。
やった!遂に俺にも運が!春が!
思わず小躍りする所長の耳に悪夢の知らせ。
『囚人がひとり足りません』
「ウォーデン 消えた死刑囚」(2019年/ニマ・ジャヴィディ監督)
消えたのは「赤顔のアフマド」。地主殺しの罪で15年の懲役…だったはずがやり直し裁判で急遽死刑(しかも執行が3週間後)。あからさまに胡散臭い。
冤罪? いやいや、冤罪だろうが何だろうが関係ない。この失態が明るみに出たら栄転の話はパー、どころか間違いなく職を追われる。
施設は施錠されている。有刺鉄線もある。見張り台も生きている。何と言ってもここは荒れ地のど真ん中。外に出られるはずはない。
奴はまだいる。絶対にこの施設の中に。外には解体作業のための重機軍団が明け渡しを待っている。時間はない。栄転か破滅か。考えろヤヘド!
この施設の中に奴はまだ必ずいる。
普通、脱獄もの、しかも冤罪絡みとなれば脱獄囚に肩入れするように作るものですが、本作の主役は所長。
刑務所ものにありがちな冷酷・卑怯なキャラではなく、人間味があり何より頭がキレる職業軍人。
まるでポアロのような推理力と洞察力でアフマドの居場所を特定していきます。
いざとなったらガスだって使う。
本作最大の特徴は時代設定と場所。1967年のイラン。
※アマゾンの解説だと1966年になっていますが、アフマドの生年月日と年齢から1967年が正解と思われます(英語版wikiの解説も1967年)。
つまり、イスラム革命(1978~79)以前、モハマンド・レザー・パフラヴィーによる親欧米専制時代のお話ということです。
まあ一種の「時代劇」なわけですが、そこまで遡らないとこういうお話を作ることはできないという事なのでしょう(特に女性の描き方とか)。
命懸けのかくれんぼは見つからなければいいという訳ではありません。そのまま施設内に居続ければ、取り壊しと同時に瓦礫の下敷き(生き埋め)。かといって投降すれば3週間後には死刑。どこかで脱出を試みないと、圧死と絞首の両面待ち。
さて、最後の最後にヤヘド所長の下した決断は…。
因みにイスラム革命前イランのリアルな風景を切り取ったのが、パフラヴィー全面協力の元、オールイランロケで撮影された高倉健版「ゴルゴ13」(1973年)です。
★本日10月25日は「世界パスタデー」。
1995年(平成7年)のこの日、イタリアのローマで「第1回世界パスタ会議」が開催されたそうで。これを記念して1998年(平成10年)に制定されました。
パスタと言えば、
★本日10月25日はリチャード・ハリス(1930~2002)の命日。
昨年は「ジャガーノート」「ワイルドギース」という華々しい2本立てにしましたが、今年は「大作だけど地味」なこの2本立で。