バカタレ映像作家(自称)にそそのかされたアホタレな若者8人(計9人)がカメラ片手に廃墟プリズンに侵入して大騒ぎ。
最早数える気にもならない夜の廃墟でドンジャラホイ。
20分もあれば余裕でまとめられる(そしてその尺であのオチならそこそこ記憶に残る…かもしれない)内容に語るべき部分はほとんど無いのですが、ひとつ見どころをあげるなら、その廃墟が「ホルムズバーグ刑務所」である、という事でしょう。
「“あれ”がいる廃墟」(2017年/ブライアン・カヴァラロ 監督)
ホルムズバーグ刑務所は「テラードーム」というあだ名が付けられた、ペンシルベニア州フィラデルフィア市とペンシルベニア州刑務所局(PDP) によって 1896 年から 1995 年まで運営されていた刑務所。
名を馳せた理由は、そこが数十年にわたる皮膚科学、製薬、および生物化学兵器の研究プロジェクトの場所だったから。
実験台はもちろん受刑者。
まあ、プチ731部隊、プチDr.メンゲレの舞台だった訳です(受刑者にはわずかに報酬が支払われていたようなので一応合法)。
主役は皮膚医学者のアルバート・グリスマン博士。
1951-1974年まで刑務所服役者を対象に医薬品臨床実験などを実施していました。
『私が目の前に見たのは、何エーカーもの皮膚だけでした。それは、肥沃な畑を初めて見た農夫のようなものでした』
作中でも引用されているクリグマン博士の台詞です。
Acres of Skin! 人を見たら実験材料だと思え!
如何にもマッドサイエンティストが吐きそうな台詞で、映画のキャラなら最後に天誅を喰らう役柄ですが、何とこの人、2010年にペンシルベニア大学名誉教授として93歳の天寿を全うしています(死因は心不全)。
人体実験に関しては、2000年に被験者ら約300人が健康が悪化したと訴訟を起こしましたが、提訴期限が過ぎているとして退けられてしまったそうで。
つまり無罪! 彼にもたらされたのは、「ニキビやシワの予防クリームの成分として使われている《レチンA》」の開発に貢献した」という栄誉のみ。
世の中って不公平にできているんですねえ。
ホルムズバーグ刑務所はその形状でも有名です。
監視塔を中心として放射線状に独房が並んでいる独自のフォルム。
『まるでミステリーサークルだ』と作中でも言われていますが、画面に写るのは青写真とか図面のみ。一瞬、空撮カットがありましたが、分かりにくいので昼間の全景も載せておきます。
こりゃ確かにミステリーサークルだ。
折角、そんな曰く付きの「本物」でロケしているのに、深夜設定だから暗い暗い。懐中電灯で映し出される一部分しか見えないのはもったいない限り(廃墟好きには「お預け」も甚だしい)。
明るい写真も載せておくので、イメージを膨らませてください(右下が劇中カット)。
いやあ、ここまで横っ飛びしないと尺が埋まらないレビューも珍しい(オチは書けないし)。
★廃墟の定番は病院(特に精神病院)。病院廃墟系ホラーのおさらいはこちら。
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★本日1月4日は皆大好き、物理学者・エルヴィン・シュレディンガー(1887~1961)の命日。
《シュレディンガーの猫》は、「とある科学の超電磁砲」から「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」まで、引用作品数知れず。
代表してこの2本を。