デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【全方位自分勝手】クワイエット・プレイス 破られた沈黙【厄ネタ家族の大暴走】

視覚はないけど聴覚鋭敏。音を立てたら獲物目指してまっしぐら、なエイリアンがアポ無し訪問。あっという間に機能停止(人類ほぼ滅亡)した地上でサバイバルしているファミリーの日常を描いた「クワイエット・プレイス」の続編。

視覚ないのにどうやって障害物避けるんだよ、コウモリみたいに超音波出してんのか、でもそれなら人間の移動にも反応するはずだよなあ、という疑問は「力任せ滅茶ぶつけでスピード感満点な暴れっぷり」でギリカバー。

音を立てたら即死亡、な世界で子供産むとか頭おかしいのか、な展開も、後先考えないぶった切りエンドならギリ「アリ」と言えなくもない…かもしれない。

視覚犠牲にして得た聴覚の割りには、自然音には無反応、息遣いとかはセーフって設定も(心音頼りに襲ってくるゾンビとか観ているこちらとしては)中途半端感が拭えませんでしたが、そこはサスペンス醸成のためのやり逃げってことでギリ許容。

…と言うかなり作り手に寄り添った立ち位置で乗り切った前作でしたが、果たして続編は…。

クワイエット・プレイス 破られた沈黙」(2020年/ジョン・クラシンスキー監督)

冒頭はエイリアンの地球到着当日の様子を描いた「1日目」

予告にお父ちゃんが出てきた時は「♪死んだはずだよお父ちゃん」でしたが、時間軸が巻き戻っていたんですね。

ここの瞬時に日常が崩れ去る絵面は秀逸(思えばリメイク版「ドーン・オブ・ザ・デッド」も冒頭10分は完璧でした)。


大混乱となった1日目に続くのは「474日目」、つまり、前作ラストの翌日。

前作未見の人は勿論、前作から2年の間に細かい事は忘れてしまった人は話が繋がらずちょっと混乱(と言うか置いてきぼり)。

確か家の周りにエイリアンがうじゃらといたと思うのですが、どう凌いだのかは語られず、生まれたばかりの赤ん坊抱いて移動開始。

設定上は1日経過しただけですが、実時間は2年。成長期の子供の発育が凄まじく、弟くんはお姉ちゃんの背丈を凌駕(一応編集で加工はしてある…らしい)。

まあロブ・ゾンビ版「ハロウィンⅡ」みたいに、マイケル少年役を似ても似つかない子役に差し替えられるよりは違和感無くて良かったですが。

いっそ、まんま2年後の設定にして、お母ちゃん(エミリー・ブラント)が「ターミネーター2」のサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)ばりのムキムキマッチョになって、子供も逞しく成長して、トラップ仕掛けまくりエイリアン殺しまくりなアクション映画にでもしてくれればこちらの溜飲も下がりまくったのに…。

残念ながら、弟くんヘタレなまま、お姉ちゃん糞生意気なままで本編突入。

どう考えても地雷な赤ん坊ですが、これが泣かない。酸素吸入器と一緒に箱詰めしているという(現実にやったら乳児虐待な)工夫はしていますが、泣かない。実は死んでるんじゃないかってくらい泣かない。

かあちゃんの授乳シーンは勿論、ミルク与えているシーンもありませんが、栄養足りているんでしょうか?

移動中にエイリアン用か生き残った無法者用か分からない「音出しトラップ」にお母ちゃんがひっかかり、ヘタレな弟くんがトラバサミに足噛まれて大ピンチ。

ここで弟くんが大絶叫。もう役者人生賭けてんのかってくらい迫真の悲鳴。他人なら迷わず喉掻っ切って静かにさせちゃうレベル。赤ちゃんが泣かないなら俺が泣いてやる!(流石にこの絶叫聞いて赤ちゃんも泣きますが)ってか。

『我慢なさい、男の子でしょ』by葛城ミサト


当然、非常呼集を聞きつけたエイリアンがお呼びですか!?

助けてくれたのは、かつてご近所付き合いをしていたエメットさん(キリアン・マーフィ)。

エメットさんは廃工場地下に隠れ、焼却施設(中に入ると密閉されて音が漏れない)をパニック・ルーム替わりにして命を繋いでおりました。

顔見知りだから助けたけど、食料はないし君らの面倒は見れないよ、という至極真っ当な反応をするエメットさんですが、お母ちゃん一家は居座る気満々。完全に厄ネタ。

お姉ちゃんは『パパはあんたなんかと違う!』とか憎まれ口叩くし。

おいおい、助けてもらっておいてその言い草はないだろう。

ヒロインとは思えぬ憎々しさ(笑)。


更に、このお姉ちゃん、ラジオから流れてきた音楽Beyond the seaを「海の向こうに生存者がいるよー」というメッセージと解釈、近くの島にある放送局を特定。ここからエイリアンの嫌いなハウリング音を流せば倒せるはず、と考えて勝手にラジオ局目指して単独行動開始。


おいおい、母親の心配とか考えないのか。実は仲悪いんじゃないのか。

ここで何とお母ちゃんがエメットさんに娘の捜索と連れ戻しを懇願。

『主人が生きていたら、あなたの目を見てこう言うはずよ。あの子こそ救う価値のある人間だと』

死んだ夫を盾にして有無を言わせぬ強い圧。お願い通り越して義務の押し付け。

いやだったらお前が行けよ。


赤ん坊がいるから離れられないという理屈かと思ったら、その赤ん坊を弟くんに押し付けて自分は薬局に買い出し(と言うか火事場泥棒のおかわり)へ。

で、弟くんは、外に出ては駄目と言われていたのにふらふら出歩いてエイリアン呼び込み。

ここから「勝手に旅立った姉とその捜索を押し付けられたエメットさん」「買い出し母ちゃん」「子守りもできない弟くん」という3つの手に汗握るストーリーが同時進行。

各々が直面した危機と解決がクロスカッティングでシンクロしていくクライマックスが高く評価されているようなのですが、経緯が経緯だけにどっちかって言うと「あーもう全滅エンドでいいんじゃね?」

他にも、この手の終末もののお約束「ウイルスにもゾンビにも冒されていない楽園」という能天気な描写があり、ここだけで本1冊書けるくらいツッコミどころがあるのですが、キリがないのでこの辺で。

一応「1日目」の描写はありますが、エイリアンが何の目的でどうやって地球に来たかは分からず終い。

こいつらが宇宙船作って操縦できるとは思えないので、知的生命体の侵略用兵器ってのが一番腹落ちする理屈なのですが、そこいらへんは次回(続編作る気まんまん)なんでしょうか。

★前作のおさらいはこちら。

★心音聞きつけてやってくる耳のいいゾンビはこちら。

★そう言えば、こいつも視覚の替わりに心音聞き分ける聴覚を持ってましたね。

★侵略エイリアンと抵抗レジスタンスのお手本はこちら。

 

 

 

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★本日3月28日は的場浩司(1969~)の誕生日(おめでとうございます!)

正直この人がここまでのアタリキャラを引き当てるとは思いませんでした。

衝撃の登場エピとスピンオフを合わせてどうぞ。

 

★本日のTV放送【13:00~BSプレミアム/プレミアムシネマ】