『君が描いたのはハテム・スライマーンだ。別名ソロモンの印』
別れた元カレに復縁迫られ、レイプは防いだものの殴られ蹴られ。血まみれになったアメリは復讐決意。
バスルームの壁に流れる血で五芒星を刻み、男を襲うと言われているモロッコの伝説「アイシャ・カンディシャ」を召喚。
期待に応えて速攻願いを叶えてくれたカンディシャですが、困った事がひとつ。
カンディシャの復讐基本数は「6」なのでした。
「呪術召喚/カンディシャ」(2020年/ジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロ監督)
監督コンビは先日ご紹介した「ザ・ディープ・ハウス」(その前は「レザーフェイス-悪魔のいけにえ」)撮った人。
舞台となるフランスの「ドン詰まりマンモス団地」の景観👇が実に良い感じ。
そこホントに駐車スペースなの?路駐じゃね?な場所に犇めき合っている車が只ならぬ住民数を示しています。
そこは貧乏民族の佃煮。白人黒人アラブ人。
発展から取り残されたエリア。中には廃墟となって取り壊される棟も。
アメリ、モルジャナ、ビントゥは、廃墟棟に潜り込んでは壁にスプレーアートを描いている3人組。
日常はまったり。
この廃墟棟の壁の中に書き込まれていた文字「KANDISHA」。
カンディシャはモロッコの民間伝承に登場する女性。ヤギやラクダなど有蹄動物の足を持つ美女として描かれる事が多いようです。
起源は諸説あるようですが、ポルトガルのモロッコ支配に抵抗し殺されたレジスタンスの女性が元になっているようで。
作中では「6人の拷問官に殺された」と説明されており、これが「ひとたび召喚したら6人の男を殺すまで帰ってくれない」理由になっています。
まぁ質(たち)の悪い「こっくりさん」みたいな感じでしょうか(いや、性格の良いこっくりさんがいるかどうかは知りませんが)。
で、アメリらの周辺男性がランダムで血祭りに。
イスラム系の血を引くモルジャナが父の知り合いだった「その道の専門家」に助けを求めますが「え~カンディシャ?そら相手が悪いわ、勘弁して」な感じで逃げ腰引け腰及び腰。
そうこうしているうちに犠牲者増えて、ようやく重い腰を。
『カンディシャにお引き取り願う方法は二つある。ひとつは悪魔祓い、もうひとつは…いや二つ目は無い。悪魔祓いでカタをつける』
これ見よがしなフラグを立てて悪魔祓い開始。
カーペットをめくるとそこにはソロモンの印が。
ええっと正しい知識があるわけではないのですが、本作では「五芒星」の事をソロモンの印と呼んでいますが、ソロモンの印って「六芒星」じゃありませんでしたっけ?(別名ダビデの星。イスラエルの国旗に使われている奴。ソロモンの印で画像検索すると六芒星しか引っかかってこない)。
五芒星は安倍晴明の桔梗印で「帝都物語」の魔人加藤が「ドーマンセーマン」と呼んでいた奴では?…と思ったらモロッコの国旗は1924年までは六芒星でしたが現在は五芒星(1956年3月2日制定)ですね。
で、WIKIではこの文様を指して五芒星「スレイマン(ソロモン)の印章」と説明されている…。
右:1956年以降のモロッコ国旗
う~む。どうも宗教上の五芒星・六芒星と呪術/占星術上の五芒星・六芒星って意味合いが違うのかもしれません(宗教が絡んでいると滅多な事言えないので深入りはしない方がいいな。よし、撤収!)。
で、悪魔祓い本番。特筆すべき描写はないのですが、イスラム感漂うエクソシズムはちょっとレア。
さて、主人公のアイシャ・カンディシャさん。前半は伝承の通りの美女さん(ベリーダンサー風エキゾチック美人)で、蹄踏み付けはある種の人たちにとっては命懸けのご褒美と言えなくもありません。
しかし、後半。唐突に「え、あんたイエティだったの?」な変貌を見せて、新聞紙を破くように人体引きちぎり。
うぉおおい、さっきまでの美女さんはどこ行った? 一応、戦士を誘惑して殺していた魔性の女が元なんだから、殺す時はもちっと気持ちいい幻覚のひとつも見せてから殺してやれよ。
あとできれば殺す奴はそれなりの奴を選んでくれ。最初の自己中レイプ未遂野郎以外はみんないい人じゃん。まあ、だからこそ恐ろしい存在なのでしょうが。
★影響を受けているのは明らかにこれ。
★民間伝承という意味ではメキシコのこちらも親戚筋。
★監督コンビの次作はこちら。
★全然関係ありませんがふと思い出したのが、