デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【70年代×テキサス×ポルノ】X エックス【Xレーティングに関する浅~い考察】

1979年。テキサス。

貧乏暮しはもう嫌だ、1発当てるぞ、と意気込む(自称)プロデューサー、ウェイン。

スターを夢見る(しかしクスリが手放せない)ウェインの恋人、マキシーン(ミア・ゴス)。

意識高い系映像作家(志望)の大学生、RJ。

その恋人で録音担当のロレイン、女優のボビーと男優のジャクソン。

6人が撮ろうとしているのは自主製作のポルノ映画

タイトルは「The Farmer's Daughters」(実際に「The Farmer's Daughters (1976)」というAVがありますが、内容に繋がりはなさそうです)。


(内容は伏せて)撮影現場として借りたのが、ハワードとパールと言う老夫妻が経営する農場の離れ。

老夫婦にはちょっと人に言えない悩みと事情がありました。

「X エックス」(2022年/タイ・ウェスト監督)

70年代のテキサスと言うだけで「いけにえ」感満開。

目の前にはワニが泳ぐ(湖ほど広くなく、沼ほど狭くない)池もあって実にフーバー(カメラはフーバーの「レプティリア」とかも撮っているエリオット・ロケット)。

お膳立ては「悪魔のいけにえ」ですが、基本骨子はアメリカン・ゴシック」

テレビからは常にキリスト教布教番組が流れ…ってか全ご家庭46時中この番組観てんのかよって言うくらいチャンネル占有率が高そうです。


当然、惨劇が起きるわけですが、目を引くゴア描写はありません。引きと寄りを巧みに織り交ぜて「不安」とか「予感」とかを静かに煽っています。

特に引きの構図がお上手。

タイ・ウェストってこんな絵面を演出できるようになったんですねえ(しみじみ)。

こちらにはいかにもアルジェントが好きそうなカット。


最初の惨劇のBGMはブルー・オイスター・カルトの「死神」(「ハロウィン」リスペクト!)。

細かいお話は(ネタバレになるので)割愛しますが、やはり気になるのはタイトルの「X」

作中では「X factor(未知の才能)」なんて台詞もありましたが、このXはどう考えても「Xレーティング」のXでしょう。

1968年から1990年までMPAA(Motion Picture Association of America。アメリカ映画協会。現在は最後のAが取れてMPA)が使用していた、16歳以上の観客にのみ適した映画であることを示すXレーティング。

他のレーティングと異なり、Xは商標登録されないので、映画製作者はMPAAに年齢認証を申請することなく(つまり、明らかに成人指定の作品をXレーティングと偽って)作品を劇場公開する事ができたわけです。

Xレーティングで公開された代表的な作品には、『時計じかけのオレンジ』(1971年)、『ラスト・タンゴ・イン・パリ』(1972年)、『真夜中のカーボーイ』(1969年)、『スウィート・スウィートバック』(1971年)などがあります。

16歳でポルノが観られるいい時代でしたが、やがてX=ポルノとなって自称Xレーティングの映画を映画館側が上映拒否するようになりました。

1990年、Xレーティングは廃止され「NC-17」に変更され現在に至ります。

観終わって驚いたのは「Maxine/Pearl…Mia Goth」のクレジット。

うええ、主役の姉ちゃんとイカレ色情狂婆さん一人二役だったのかよ。

途中、この婆さん、実は若い人が演ってんじゃねえか、と思うカットはありましたが、まさか二役とは。

この婆さんの若い頃を描いた前日譚「Pearl」が続編として作られています。

更にマキシーンのその後(ああ、本作でマキシーンが死なない事がバレちゃいましたね)を描く「MaXXXine」も作られるそうです。いい役拾ったなぁミア・ゴス。

関係ないですが、マキシーンのこのカット、「真珠の耳飾りの少女」に似ていると思いません?


★ご参考

 

★タイ・ウェストと言えば…。

 

 

 

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