壁に空いたひとつの穴。
それはのぞき窓であり口唇であり陰唇であり…。
彼女が与えてくれるのは才能。その見返りは…。
「壁女」(2015年/マイケル・メダリア監督)
壁尻の話ではありません(原題はDEEP DARK)。
ヘルマン(ショーン・マクグラス)は《自称》芸術家。いつか世界から賞賛と喝采を浴びる存在であると信じて疑わない男。
彼が作るのは絵画でも陶芸でも音楽でもなく「モビール」。
字幕では(台詞も)モービルになっていましたが、日本での馴染み深い呼び方は「モビール」でしょう(より正しい発音はモウビルのようですが)。
モビール(MOBILE。移動式通信のモバイルとも同じスペルだからややこしい)。動く彫刻(キネティック・アート)の一種で、紙やプラスチック、金属板、薄い木の板のような軽い素材を、糸や棒、針金などで吊るし、特定の位置でバランスを取って安定するようにしたものです。
作り方次第でそこそこお洒落なインテリアになるものですが、ヘルマンのそれは小学生の夏休み工作レベル。
才能なんか微塵も無い事は誰の目にも悲しいくらい明らか。
それでも自分は本当の芸術家であると主張し、働く事もせず、地下に籠って独り創作の世界へ。
画商デボラ・クラインが主催する「新規芸術家募集」に賭けてみましたが体を張ったプレゼンは大失敗。
更に夫を亡くして金に困った母親がヘルマンの部屋を貸し出す事を決め…
『僕はどこで寝るのさ!?』
『私の部屋よ(With Me)』←すげー嬉しそう。
下痢腹に浣腸です。
デボラ・クラインに直談判して貰った猶予が2週間。それまでに傑作を仕上げなければもうどこにも居場所がない。
芸術家として大成した叔父にアドバイスを乞うと…
『インスピレーションを与えてくれる場所がある』
それはかつて叔父も住んでいたアパートの一室。管理人に訊いたら常に空き部屋。
その部屋に入るにはゴミ捨て場のある裏口を通って…。
ベッド(と言うかマットレス)と冷蔵庫以外、家具らしい家具は無し。
14日分の食料を持ち込んで引き籠り創作開始。しかし…。
相変わらず出来るのはガラクタばかり。もうすぐ食料も尽きるという時、壁に空いた穴からスルスルと1本の紐がこんにちは。
手繰り寄せてみると先には丸められた手紙(伝書鳩に付けるような奴)が。
《助けてあげる》
声は聞こえる。姿は見えない。コミュニケーションは壁の穴。
壁穴を介して渡される彼女が生み出した「何か」。ひとつめはマスカットの実に似た…。
それをモビールに組み込んでみたら…
彼女が与えてくれたのは才能というよりは一種のチャーム。
見た人がそれを「傑作」と認識するマジックアイテムのようなもの。
デボラにも高く評価され、大金を手にし、個展の企画も。全てが好転したかのように見えましたが…。
壁女の求める見返りはヘルマンそのもの。ずっと一緒にいてくれること。
ほどなくその独占欲は嫉妬に変わり…。
そしてヘルマンに嫉妬した周囲の人間は壁を我が物にしようと…。
よく「SFは発想と設定、語り口」みたいな事を言っていますが、ホラーにも同じ事が言えそうです。
★ドン詰まった芸術家と言えば…
★才能(と若さ)と引き換えの契約と言えば…
★全然関係ないですが「壁尻」と言えば、
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※昨年3回(3/12BS12、6/25BS12、12/09テレ東)。今年は7/22BS-TBSに続いて2度目。記録更新なるか!?
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