『今の私は、姉妹みんなのおかげでここにいる。あの思い出もこの想いも…消してしまおう!』
既に答えが出ている(風太郎が誰を選ぶのか分かっている)中での「原作未消化エピソード」の映像化。そこにどんな意味があるのだろう、と思っておりましたが、きちんとミッシングリンクを繋ぐ役割を果たしておりました。
劇場版のサブテキストとしても十分すぎる仕上がり。
「五等分の花嫁∽/偶然の無い夏休み(前後編)」(2023年9月2日9日TBS放送/宮本幸裕監督)
時間軸は2期の修学旅行から劇場版の学園祭の間(つまり夏休み。それ以前の話は個々の回想として描かれます)。
修学旅行前後で発生した姉妹間の軋轢が解消して仕切り直し。
一番やらかしてしまった一花は一歩引き気味。色々吹っ切れた二乃と三玖は更に積極的に。
『フーくんはいなくならないで。お母さんも…きっといつか皆も、離れ離れになってしまう。それでも…フーくんはずっとそばにいてくれる?』
『フータロー、私とつきあおうよ』
前編は海回。五つ子が海に行くという情報を得て「偶然の出会い」を演出するため風太郎を海に引っ張り出した妹・らいは。
しかし、そこにいたのは風太郎のクラスの面々。
実はクラスイベントとして企画された集まりで風太郎にも案内が飛んでいた(良かったなぁハブられなくて)のですが、メール未読(友達いないですし)。
更にこの日は五つ子の引っ越し日(アパート解体で退去。元の高級マンションへ)。
不幸な偶然が重なって、らいはの奸計は水泡に。
無精中の幸いで、クラスメイトとの交流を愉しんだ風太郎。
『上杉君も楽しそうで良かったよ』
『俺…楽しそうだったか?』
確かに楽しかった、でも、何かが足りない。
後編は「物足りなさ」を感じた風太郎の提案によるプール回。
修学旅行時の「修羅場トルロワイアル」再演を回避すべく、風太郎と姉妹の接触を極力避けようと画策する五月でしたが、皆思いの外冷静。但し二乃と三玖だけは…。
水着も攻めます二乃&三玖。
帰り道、四葉の真意を質す五月。
四葉の心をよぎる風太郎との出会い(再会)の瞬間。
(ご飯中にまで勉強。それに100点のテスト。もしかして、あれからずっと頑張り続けていたの?それに比べて私は…)
(あたしのことなんか覚えてないよね。私は知ってるよ。君のこと。ずっと前から)
5人の想いを丁寧に拾って運命の学園祭へ。
本作はアングルの撮り方が絶妙(と言う表現に語弊があれば「実に私好み」)。
高さ、画角、距離、大胆な余白、遠景と近景…。
実写と比べて物理的制約が少ない分、作り手のセンスを感じます。
おまけ(個人的ベストショット)
夏祭りの回想シーン。メインヒロインの座を放棄したとしか思えない五月の表情がナイスです。
★「映画 五等分の花嫁」のおさらいはこちら。
★本日9月23日は筒井康隆(1934~)の誕生日(89歳!おめでとうございます!)
思えば中学時代に「狂気の沙汰も金次第」を手に取ってしまったのが、誤った読書人生の始まりだったような。
筒井関連の記事(原作、出演、未映像化シナリオ)をひとつふたつみっつ。