『すまん、セガール。製作資金が底をついちまった。物は相談だが、ギャラは撮影期間中と撮影終了後1学期(full semester←ざっくり半年)のマクドナルド料金で勘弁してもらえんか?』
監督兼プロデューサーのフィリップ・マルチネスからの耳を疑うご提案。
『そうか。無いものは仕方ないな…』
その場で粛清されても仕方ない世迷言を飲んだのかセガール!?
まあ実際にどのような会話がなされたのかは誰にも分かりませんが、「金が無い。マックでどうだ!?」「仕方がない。約束は守れよ」的なやりとりがあったのは事実のようです。
本作の微妙な出来の理由が分かったような気がします。
「沈黙の終焉」(2019年/フィリップ・マルチネス&ロス・W・クラークソン監督)
ソフトのジャケに「セガール引退」の文字がでっかく踊る“沈黙シリーズ”第44作。
そもそも“沈黙シリーズ”などいうものが存在しない上に、セガールは本作の後に「沈黙の鉄槌」とかに出ているので色々と嘘つき。
お話はセガール率いる凄腕CIA工作員が国際臓器売買シンジケートのボス、オルセッティを捕えるため、カンボジアのブローカーを包囲したらミスって仲間がひとりあの世行き(敵は全員あの世行き)。
CIAの偉い人(華がないにも程があるおば様)が『チームは解散よ。全員再訓練受けて別部署異動』とか言い垂れやがりますが、全員聞く耳持たず。
ふざけんな、家族同然の仲間が殺されたんだぞ。このまま引き下がれるわけねーだろ。
本部の命令ガン無視して全員帰還拒否。昔の繋がりで大金持ちのお姉さんをパトロンに引き込んだセガールは、潤沢資金で暗殺チーム再結成。待ってろオルセッティ。
…と書くと盛り上がっている様に見えますが、実はそれほどでも。
ミッション:インポッシブル的なチームプレイとか、ワールドワイド感を出そうとしたロケ地移動(カンボジア、マルタ、タイ、フィリピン、香港、ニューヨーク、スペインを行ったり来たり)を繰り返しますが、何故か箱庭感が募るばかり。
ぶっちゃけ「東南アジア」って国が変わっても景色の印象あまり変わらないしね。
あとセガールの演技(アクションじゃないよ)にキレがない。いざと言う時の判断が甘いというか、原題「GENERAL COMMANDER」なのに、こんな上司に命預けるの嫌だなぁって感じ。
聴けば、本作、"第三次世界大戦を阻止するため、主要犯罪組織と戦う国際的な極秘準軍事組織 "を描くテレビシリーズ(1話45分で全9話)として企画されたんだそうです。
それが諸般の事情(金がなくなったとか、予算が底をついたとか、主役にやる気がなくなったとか?)で劇場公開版にモードチェンジ。
本来、1話・2話になるはずだった冒頭部を編集したパイロット版みたいなものなのでしょう(監督のWクレジットもそこに起因しているようです)。
クライマックスはお約束のタイマン勝負ですが、相手の弾がなくなったからと言って、こっちも銃棄ててナイフ勝負に付き合う必要はないと思います(「コマンドー」にはキャラ的な説得力がありました)。
ただ、セガールの得物、あれククリですよね。あなた、いつグルカになったの?
「シリーズ化の目もなくなったし、もうどうでもいいや」な終わり方にセガールの虚無を見ました。
因みに冒頭の「ギャラの変わりにマック半年」には後日談があります。
結局、マルチネスは2か月分程度しかマック料金を払わず、怒ったセガールがマルチネスを訴えました。非公開で行われたこの裁判は「ビッグマックの代金」で決着したそうです。
スケールのデカい話だな~。
おまけ
シンジケートのボス、オルセッティの左腕に入っていた漢字のタトゥー。
最初は「寺鬼」かと思いましたが、終盤で「侍魂誇」である事が判明(誇の下にもう一文字ありそうなのですが見えませんでした)。
サムライスピリッツを纏っていたんですねえ。仕事は臓器売買でしたが。
★正統派グルカのククリと言えば…
★腕に刻んだ漢字と言えば…
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追悼:財津一郎
財津キビシー!一郎氏がお亡くなりになりました。
10月14日。東京都の自宅にて。慢性心不全。89歳。
訃報のヘッダーがほぼ全て「タケモトピアノ」になっているのが少々複雑。
私ら世代だと「ピュンピュン丸の歌」でしょうか(ず~っと「花のピュンピュン丸」だと思っていました。正式名称は「ピュンピュン丸」だったんですね)。
映画ではこの3本(全部81年公開!)。
※財津さんに触れているのは「BJブルース」だけですが、そこは心の眼で脳内補完を。
★本日のTV放送【13:40~テレビ東京/午後のロードショー】