『愛とは決して後悔しないことよ』
(Love means never having to say you're sorry.)
『そんな馬鹿な話、聞いたことがない』
(That's the dumbest thing I ever heard.)
「おかしなおかしな大追跡」(1972年/ピーター・ボグダノヴィッチ監督)よりバーブラ・ストライサンドとライアン・オニールの台詞です。
本家公開の翌々年に自虐的パロディをかますとは。ボグダノヴィッチのセンスか、ライアン・オニールの反骨か。
ちょいと時間が経ってしまいましたが、ライアン・オニールがお亡くなりになりました。
現地時間12月8日(2012年に前立腺癌を公表)。82歳。
そして本日13:00~NHK BS/プレミアムシネマにて
「ある愛の詩」(1970年/アーサー・ヒラー監督)
What can you say about a twenty-five-year-old girl who died? That she was beautiful and brilliant? That she loved Mozart and Bach, the Beatles, and me?
『25歳で死んだ女性について何を語ればいい? 美しくて聡明だった? モーツァルトとバッハとビートルズ、それに僕を愛していた?』
雪の降りしきる中、ベンチに座り込む男の後ろ姿。いいから泣け!と言わんばかりのテーマ曲。立ち上がりから悲しい結末を予感させる冒頭部が結構好き。
「ある愛の詩」と言えば何はさておき「Love means never having to say you're sorry.」
あまりにも有名故に翻訳のみが独り歩きして何だか妙な議論(この訳で本当に合っているのか?)まで生んでしまった名台詞「愛とは決して後悔しないこと」。
この台詞、劇中2回出てくるのですが、シチュエーションが全く異なります。
最初は鍵を忘れて家に入れず玄関で座り込んでいたジェニー(アリ・マッグロー)にオリバー(ライアン・オニール)が掛けた『I'm sorry』という言葉に対してジェニーが言った言葉。
2回目はラストで『ジェニーは死にました』と伝えるオリバーに父オリバー・バレット3世(レイ・ミランド)が掛けた『I'm sorry』という言葉に対してオリバー(この人が4世ね)が言った言葉。
同じ台詞ですが意味合いがまるで違います。本来なら別の言葉(特に1回目)にするべきなのですが、同じ台詞(英語)なんだから同じ翻訳(字幕/吹替)にすべきという「その通りだけどそうじゃない」理屈でどっちも「愛とは決して後悔しないこと」になってしまいました。
字幕だと読み流してしまえるのですが、吹替となるとちょっと違和感が。
因みに本作最初の地上波放送の時(1977年12月21日…って日付も今日なのか!?日本テレビ水曜ロードショー)の吹替は山口百恵と三浦友和でした。
山口百恵の声がクールビューティ―過ぎて、本来ちょっと茶目っ気のあるジェニーにあっとらんなあとか思って観ておりました(友和さんは必要以上に目立たない出過ぎないな当時の立ち位置をキープ)。
ニュアンスとしてはジェニーの台詞は「愛しているなら謝る必要なんてないのよ」な感じですし、オリバーの台詞は「僕たちに後悔はありません。だから謝らないで」みたいな感じなのではないかと(異論は認めます)。
また、父の『I'm sorry』には「すまない」「残念だ」「お前を愛している」など色んな気持ちがないまぜになっていて、噛めば噛むほど味わい深いやりとりになっています。
今回の放送はどのような字幕になるのでしょう。
8年後の1978年、本作の続編「続ある愛の詩」が作られています(お相手はキャンディス・バーゲン)。
でその翌年、「メーン・イベント」で再びバーブラと共演。
題材はボクシング。サブタイトルは「A Glove Story」でした。
★曼荼羅畑的にはライアン・オニールと言えば「バリー・リンドン」とこれ。
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