希釈感が半端ないですし、単純化・矮小化もされていますが愛はあります。
ハリウッド版の同人誌だと思えば“頑張ったね”くらいの評価にはなろうかと。
「ゴースト・イン・ザ・シェル[字幕版/吹替版]」
(2016年/ルパート・サンダース監督)
お話の(と言うか映像の)ベースは押井版攻殻(劇場版1作目)。味付けに「イノセンス」と「2ndGIG」。
要するに押井リスペクト満開、「ワタシ、オシイサン、ダイスキデス!」な同人スピリッツ溢るる三次加工品です。
賛否合ったスカーレット・ヨハンソンですが、私はアリ。
ごっつい体つきは義体の重量感を表現して余りありますし、首を突き出してノッシノッシと歩く様は猪突猛進な一途さを現しています。
欲を言えば、SAC素子にあったダイナマイト・ボディ感、アクションのキレ、しなやかさ、エレガントさ、指揮官としての冷静沈着さと非情さ、何かの拍子に垣間見える可愛さ・優しさがあれば尚良かったと思います。
やたら金掛けた舞台装置の中で繰り広げられるのが少佐の“自分探し”だったり、敵役のクゼが何ら思想的根拠を持ち合わせていない小物だったりするのは“個”を大切にするアメリカならではの心遣いでしょう。
荒巻大輔という大任を担ったビートたけしの台詞が“何を言っているのか全く聞き取れない”上に“意図的にやっているとしか思えない棒読み”なのはメソッド演技法に対する彼なりのアンチテーゼなのではないかと思います。
押井版攻殻のオリジナル・キャストによる吹き替えは素晴らしいの一言で、攻殻らしさをきっちりかっちり上塗りしておりました。
てっきりたけしの台詞も大木民夫氏(まだ存命だった)か阪脩氏が吹き替えてくれるものと期待しておりましたが残念ながらたけしのままでした。
反面(その役必要だったのか?という指摘はさておき)、素子の母親を演じた桃井かおり姐さんは素敵な存在感をふりまいておりました。
桃井姐さんはセルフ吹き替え(「スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ」以来?)。
音楽は「ブレードランナー」をタンジェリン・ドリーム風にしたシンセで気持ちはわかりますが中途半端。
エンドクレジットでは川井憲次のテーマ曲をまるっと使用していましたが、できれば「シン・ゴジラ」が伊福部と鷺巣をミックスしたように、川井と菅野をミックスして全編に流せば更なる同人愛を感じることができたと思います。