『お前達全員に電脳がある。従うべきゴーストを持っている。
それ以上を他人に望み、代わりに何を差し出す気だ?
…未来を作れ!』
原作版、押井版、神山版に続く“第4の攻殻”。プロローグとなったミニ・シリーズ「ARISE」は、個人的には残念無双な出来栄えでした。
劇場版もARISEの世界観を引き継いでいるので、正直あまり期待していなかったのですが、ARISEの戦犯(?)黄瀬和哉が総監督に退き、野村和也が監督に就いたせいか、“これはこれでアリ”な仕上がりに。
ARISEとの違いは幾つかありますが、やはり草薙素子が単なる記号から人間(=キャラクター)に昇華された事が大きいと思います。
押井版、神山版の完全無欠な草薙に比べ、こちらの草薙はまだまだ未熟。
『お前達は私が見つけた最高のパーツだ。パフォーマンスを発揮できないなら、いつでもパージしてやる』
指揮官たらんとして発した言葉も、「あれで俺たちに発破かけてるつもりなんだよ」と見透かされてしまいます。
圧倒的な能力で畏怖させるのではなく、“助けてあげたくなる”存在。
『俺たちを守るってんなら笑わせるぜ。パーツ呼ばわりするくせに』
『モノ呼ばわりはしても、モノ扱いはしてねえぜ』
首相補佐官に笑いかけたり、トグサにロボットなのでは疑われて、サンドイッチを親の仇のようにかじったり表情が豊か。
ラストで押井版の冒頭(「あら、そう」「窓の外だ!…光学迷彩!」)に繋がり、
更に、エンドクレジットの最中に神山版2ndGIGのラスト(桜の24時間監視)にリンクする構成はあざといですが、“繋がった”快感はなかなか。
伴音に徹したコーネリアスの音楽は、身の程を知っているとも言えますが、やはり地味(私は音楽で盛り上げて欲しい派なのです)。
音楽差し替えたら相当印象変わると思いますが、そこいら辺差し引いても見応えのある作品でした。