デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【呼ぶ】来る【祓う】

タクシーの中でご機嫌にはしゃぐ叔母様軍団。

『皆さん、観光ですか?』

『バケモン退治よ』

次の瞬間…


同じ頃。東京に向かう新幹線の中。

『ヤバイんちゃうか』

『分かれて動いた方がええかもわからん』

『我々は新横浜で降りますわ』

『わしら品川でな』

『ま、誰ぞひとりくらいは無事に辿り着けるやろ』

タクシーの叔母様方4人は沖縄のユタ(シャーマン)。

新幹線に乗っていた4人の叔父様たちは甲賀大鳥神社の神官(除霊師)。

宗派は違えど、その霊圧の消失を察知して危機回避の行動に出る。

只者じゃない。プロフェッショナルの登場は画面を一気に引き締めます。


様々なルートで東京に集結する霊媒師、除霊師、祈祷師、巫女etc.

果たして彼らの目的は…?

「来る」(2018年/中島哲也監督)

結婚、出産、マイホームと人生の頂点を謳歌する田原秀樹(妻夫木聡)。

勢い余って盛りに盛った幸せを子育てブログで撒き散らし、イクメンぶりをアピール。

その幸せ家族の元を訪れた「何か」

それは田原の故郷に伝わる怪異(お山に呼ばれると神隠しに遭う)のデリバリーサービスなのか。

田原の友人の民俗学研究家・津田の紹介で知り合ったオカルト・ライター野崎(岡田准一)が引き合わせてくれたプチ霊能キャバ嬢・比嘉真琴(小松菜奈。名刺はマコト)。

彼女には確かに霊視能力がありました。しかし、田原家を訪れた「何か」はとてもマコトの手に負える代物ではなく。

そして登場する「ホンモノ」の最強祈祷師・比嘉琴子(ひがことこ←マコトの姉。松たか子)。


恐らくは国家に通じるレベルのコネクションを持つ琴子は、地方警察を顎で使って大規模人払いを敢行。全国から霊能者を呼び寄せて一大除霊ゾーンを構築。「何か」との一騎打ちに挑みますが…。

これがホラーか?と言えば完全にNO。

これは「禁じられた遊び」のレビューで言及した折伏エンターテイメント」

あの時、確かに私はこういう👇絵面を求めておりました。


お話は意図的なんだとは思いますがあっちもこっちも説明不足で、モヤモヤが累積赤字。

134分という長尺ですが、田原メインで進むのかと思わせて、田原妻(黒木華)にバトンタッチ、そこから野崎に繋ぐという三段逆スライド視点変え(とその度に明らかになる事実)が功を奏して飽きることはありません。

まあ、構成はお上手なんですが説明がド下手糞なので、モヤることに変わりはないのですが(原作読むと解消するみたいです)。

調子良くその場を凌ぐことだけに長け現実を見ようともせず、外面だけを美しく盛り付けた子育てブログへ逃避している田原を演じた妻夫木のクズっぷりと、落ち目のタレント霊媒師と見せかけて実はホンモノだった逢坂セツ子を演じた柴田理恵の存在感が頭抜けておりました。


オチも含めて松たか子(のキャラ)は微妙(笑)。

やはりこの監督さんは「ストーリー」よりも「画作り」に興味があるみたいですねえ。


全方位寸足らずですが、昨今の「ギャグにしか見えないなんちゃってJホラー」に比べれば、格段に”いい感じ”であったと思います(この手のエンタメホラーに宗教的な突っ込みは野暮)。

折伏エンタになり損ねた「なんちゃって」Jホラー

中島哲也監督作あれこれ

 

 

 

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★本日のTV放送【13:00~BS-TBS