♪ミステリー・ナァアイル!のギラーミン版から44年! 再びのナイル川殺人クルーズ。
「ナイル殺人事件」(2022年/ケネス・ブラナー監督)
冒頭、ベルギー軍として第一次世界大戦に参加する若き日のポアロの姿が。
ポアロは18世紀中頃に生まれ、警察署長を定年退職した後にドイツ軍のベルギー侵攻の際に英国に亡命した、という事になっているので、もうこの時点で原作設定ガン無視な訳ですが、それでもケネス・ブラナーがこのシーンを入れたかったのには理由があったのだと思います。
一見「ポアロの口髭の由来」という「インディー・ジョーンズの帽子の由来」的サービスカットのようにも見えますが、ここは「類稀な観察眼によって自軍全滅の危機を回避したものの、一瞬の油断から上官を失い、自身も生涯消えない傷を負った」事が一種冷徹とも言えるポアロの事件アプローチの源泉になっているという人格形成ネタだったのではないでしょうか。
そして、行き過ぎたこだわりはいつしか「強迫観念」に。
前作「オリエント急行殺人事件」でも「同じ大きさの卵にこだわる」というやや病的な描写がありましたが、今回も並べられた7つのプチデザートを『奇数は嫌いだ。偶数が良い』とひとつ返却したりしておりました。
こだわりは数だけでなく形にも。
シンメトリーに関する異様なこだわり(最早「執着」)。遺体の足が左右非対称になっているのが我慢できず、つい位置を直してしまう所とか顕著。
カメラも彼の好みに合わせるかのようにこれでもか!とシンメトリー。
因みに撮影は全編イギリスのスタジオだったそうで。そこから一歩も出ず。勿論、エジプトロケなどしておりません。豪華絢爛CG絵巻(でなければ計算通りのアングルで撮れません)。
撮影技術の他にアップデイトされていたのが、事件関係者の構成。
アフリカ系の叔母と姪(白人と恋愛中)。インド人の管財人。同性愛の老婦人カップル。
当然、これらの方々を悪く描くことなど天が許しても社会が許さないので、全員潔白。加害者は勿論被害者にもなりません。
消去法で残った白人が7人(除くポアロ)。この内の3人が犠牲者で2人が加害者。
なんと分かりやすい。
流石ディズニー。芸術的ポリコレです(時代設定1937年ですよ)。
何か無性にギラーミン版「ナイル殺人事件」が観たくなりました(地方の併映は「ルパン三世(対複製人間)」だったなぁ…)。
★ブラナー版ポアロの前作はこちら。
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