『いや好きでやってるわけじゃないですよ別に。これしかできなかったからやってるだけです!』
関西には「関西殺し屋協会」というビジネスネットワーク(互助会とも言う)が存在する(らしい)。
この協会から紹介された京都最強の殺し屋・国岡昌幸に密着取材した記録映像、という体のモキュメンタリーなのですが…。
「最強殺し屋伝説国岡[完全版]」(2018年製作2021年公開/阪元裕吾監督)
《撃つだけの簡単なお仕事》に従事している国岡昌幸は経験2年の23歳。若いながらも卓越した殺し技で京都最強と謳われる男。
日常生活は至って普通。「ぼちぼち時間なんで」と荷物をまとめて現場に行ってレジャーシート広げて弁当喰って引き金引いてまったり撤収。
監視カメラに死角なし、な現代日本に於いて「殺し屋ビジネス」が成立するリアリティは微塵もありません。
狙撃場所は子供の声を漏れなく拾っている公園だし、人が死んだであろうそう遠くない現場からは悲鳴ひとつあがらず、パトカーも来ず(一応、現場処理班が存在するという説明はある)。
しかも、依頼はネット発注で依頼人は小学生。後から母親が国岡に直接「キャンセル」と「カード決済分の返金」を要求。この世界「無しにしては無し」。何より仕事は既に終わっている。
『じゃあもう警察行きます』
『訴えますよ、こっちも。埒あかないし。どう考えても裁判しかない』
裁判? 嘱託殺人の支払い不履行の裁判? ええっと、君ら一体どこの国で何の話をしているのかな?
※因みにこの裁判、国岡くんが勝訴しています(しかも家庭裁判所かよ!?)。
派手なシーンが撮りたいという取材陣のリクエストに応じて国岡くんが連れてきたのが舞子はん。舞子衣装のまま街中でアサルトライフル連射。ありえねー。
それでも前半は国岡役・伊能昌幸の好演も相まって「ドキュメンタリー」っぽかったんですよ。それが中盤に「処刑軍団ホワイト・ベアー」が登場してからは完全に漫画、いや学生ノリの自主映画。
なんかもう「クラファンに乗ってくれた方には殺し屋役で出演権プレゼント。お笑い好き歓迎」みたいな集め方をしたとしか思えない方々の三文芝居が。
大体ドキュメンタリーにこんな👇カットはあり得ないしあってはいけません。にもかかわらず本作は飄々と映像作品のお約束を飛び越えて勝手気ままに。
これが「いつかどこかの日本」みたいなSF設定か、台湾とか香港の裏社会が舞台とか、実は外はゾンビまみれみたいなトンデモ世界なら逆に「殺し屋のリアル」を表現できたのかもしれません。
なので本作を「観る価値無し」と断ずる方々の気持ちも分からなくはないのですが、いやあ、これ駄目って言っちゃ駄目だろう。
『いや努力した事はありますよ、いくらでもそりゃ。普通に会社行って、バイトもしてみたいな感じで。やろうとしましたけど、いや駄目だったんですよ全部。会社には真面目な陽キャしかいないし。だから人とスピードもあわないし、ペースも合わせらんないですよ俺。だからそういう人と合わせなくていいような自由な仕事だと思って、俺この仕事始めたのに、こっちにはこっちのルールが、もうガチガチで。結局自由なんかどこにもないじゃないですか。結局どこでもそうだから、生きていくのが難しいって話をしてるんですよ。皆が当たり前にやっていることが、俺にとっては当たり前じゃないし!みんなが普通にこなす事が俺にはできないし、当たり前とか普通の基準が高すぎるんですよ。マジで』
この前後もあってかなり長いシーケンスなのですが、途中何度かカットして繋いでいるのが残念。これワンカットで撮りあげていたら「遠雷」のジョニー大倉独白場面と並ぶ名シーンになっていたと思います。
国岡を取り巻く業界人も魅力的。トラブルに巻き込まれて深夜の一人ウォリアーズになった国岡に弾丸を届ける「出張弾屋」のお姉ちゃん。
手持ちの現金がない(カード決済お断り)ので翌日払いの「ツケ」をお願いしたら「いいですよ」とにこやかに笑って倍以上の金額提示。利息1日10割超え。流石関西、足元見ます。
因みに名古屋には、不要になったヤクザを処理してくれる「ヤクザ処分場」があるのですが、それはまた別の話。
★ご参考~不思議時空・名古屋
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