デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

君の心の中に国家がある。 絞死刑

f:id:zombieito:20201029152452j:plain


『誰が私を殺すんですか?』
『それは国家だ』
『国家?国家ってなんですか?あったら見せてください。私はそんな見えないものに殺されるのは嫌です』

本棚整理していたら古いビデオが出てきました。

「絞死刑」(1968年/大島渚監督)


女子高生暴行殺人で死刑を宣告された在日朝鮮人R。
しかし、首を吊られてもRの心臓は元気にドックン。
ようやっと意識が戻ったと思ったらRの記憶は全てすっ飛び私誰?。
これじゃ死刑の再執行ができないじゃないか・・・。

『長いことこんなことをしているとこういう日もある。今日は失敗だ。諦めよう』(所長)

居合わせた教育部長、医務官らは、Rに自分の罪を思い出させようと奮闘しますが・・・。

見所は何と言っても検事役の小松方正でしょう。

始終、事の成り行きを黙って見守っておりましたが、記憶を取り戻したRが無罪を主張するに及ぶとすっくと立ち上がり(この瞬間、構図的に小松は壁に掛けられたでっかい日の丸を背負う形になる)、Rに退出を促す。しかし、Rがドアを開けた所で立ちすくむや否や、

『何故立ち止まる?君が出て行こうとした所、それが国家だ!君が今立っている所、それが国家だ!君は国家を知らないと言った。しかし、君は今国家を見ている。国家を知っている。君の心の中に国家がある。心に国家がある限り君はやましい。君は自分が死刑になるべきだと今思った』

f:id:zombieito:20201029152617j:plain


良いとか悪いとか、正しいとか正しくないとかそんな事は置いておいて、この小松方正には震えが走りました。不謹慎にも「そうか、ファッショってかっちょいいんだ」と思った瞬間です。

小松の台詞がやがて大島のナレーションに変わっていくラストも素晴らしい。

大島をただの「バカヤロウ」オヤジだと思っている人、「戦メリ」も「御法度」も観なくていいから、是非この作品と(1週間で打ち切りになった)「日本の夜と霧」を観てください。

 

 これです、これ。☟