『寿司は出所した時に喰うもんだ。ラーメンだと娑婆に未練が残る。やっぱ自首する前に食べるとしたらカレーだな』
三浦友和は実にいいポジションを見つけたと思います。
「転々」(2007年/三木聡監督)
大学8年生・竹村(オダギリジョー)の目下の悩みは借金84万円。
そこに借金取り福原(三浦友和)が提示した、借金棒引き+謝礼100万の「好条件」。それは、
『散歩につきあえ。期限はなし。俺がいいと言うまで。目的他は霞ヶ関』
怪しい…怪しすぎる。でも立場上断るわけはいかない。
やさぐれ男二人の東京下町散歩が始まります。
どうやら福原は何か犯罪を犯して、警視庁に自首しようとしているらしいのですが・・。
あてどもなくただ歩く二人。まるで乗り物使わないロードムービー。
後半は、小泉今日子を巻き込んでの「即席家族ごっこ」。
嫌々付き合っていた竹村(幼少期に親に棄てられている、という設定)も、ニセの家族をいとおしく思い始めてきた矢先、
『何、作ってるんですか?』
『カレー』
『え!カレー?』
『そう。あの人がカレー食べたいって言うから』
『ふ、福原さん、もうカレーなんですか?』
「獣たちの熱い眠り」の頃は、三浦友和がこんな「ダサかっちょいい」オヤジになるとは思いませんでした。
という訳で役者に関しては文句無し(素材も魅力的)。ただ、演出が…。
メイキングとか観ると、踏んづけた歯磨き粉チューブ(アクアフレッシュだったかな)から綺麗に3色の中身が出るか、とか、友和の投げた団子の串が綺麗にオダギリの服に張り付くか、とかどーでもいい事にばかり腐心しています。
んな事ぁどーでもいいから、グッとくる東京の景色見つけて来いよ。その点景が印象に残るかどうかがこの作品のキモなんでないかい?
あとこの監督のギャグセンスが壊滅的絶望的なまでに自分とは合いません。
走る真似している役者を合成しての追いかけっことか昭和初期の喜劇じゃないんだから。
頭皮の匂いが崖の匂いに似ているとかホントどーでもいいです。
藤田宜永の原作(未読)ではどういう描写になっているんだろう…。
★この監督の笑いのセンスが極みに達し、作品が焦土と化したのがこちら。
★三浦友和を堪能したい方はこちらをどうぞ。