
「失敗作」の烙印を押された作品は数あれど、たった1本で会社、それもメジャー企業を倒産に追い込んだ厄ネタ映画は恐らくこれだけではないでしょうか。
「天国の門」(1981年/マイケル・チミノ監督)
1890年、ワイオミングで起きた入植移民対牧畜協会の戦い、いわゆるジョンソン群戦争を描いた一大叙事詩です。
たった数カットのために鉄道を引き、街を作り、道幅が気に入らないと壊して作り直し、気がつけば750万ドルの予算が3,500万ドルに。予定より1年遅れで公開して大コケ。
興行的大惨敗とマスコミのバッシングは製作会社ユナイトの屋台骨をゆっさゆっさと揺さぶってMGMに買収される直接的原因となりました。
が、しかし!ここで唐突に結論。「天国の門」は傑作です。
冒頭、延々30分を費やして描かれる1870年のハーバード大学の卒業式。
そして一気に20年後のワイオミング(この場面転換が素晴らしい)。続々と入植してくる移民たち。未来と引き換えに手に入れたのは荒涼の大地。ビルモス・ジグモンドによる息を飲む映像。
深夜にバーボン舐めながら3時間40分(長くない!)の至福。
1981年、10代最期の年にテアトル東京の閉館記念(オールナイト)として赤絨毯の隅っこで膝を抱えて観た映画。思い入れもひとしおです。