世間的な評価はボロボロですが、無視できないSomethingに満ちた怪作です。
「エイリアン3」
(1992年/デヴィッド・フィンチャー監督)
まず、前作でリプリーが体張って守ったニュートがあっさり死んでいる(しかも溺死)という設定がショッキング。
おいおい、ヒックス伍長はさておきニュートは殺すなよ。全員無駄死にかよ。
まあ、舞台が「凶悪犯罪者(全員YY染色体保持者)の更正惑星」なので、子供は扱いに困るという事情も分からなくはないですが。
それだけの犠牲を払った割には、登場人物のキャラがビタ一文立っていないのがこの脚本の致命傷。
犯罪者と呉越同舟で外敵(この場合エイリアン)と戦うのなら、「俺の名はナポレオン」とか「俺の名は砂漠」とか「スネークと呼べ」と言い垂れる曲者がいなければなりません。
ところが、ここにいるのは、強面の割には物分りが良い署長と、宗教かぶれの囚人。訳ありの医者は重要な役どころを担うのかと思いきや、何のタメもなく退場。
名目だけかも知れませんが一応ウォルター・ヒルも脚本に名前連ねているんだから、もうちっと何とかならなかったのでしょうか。
加えて、後のフィンチャー作品からは想像もつかないチャチいCGと画面合成。編集もやたら不自然。
外はマイナス40度の極寒の男世界で犬に寄生ってのは「物体X」リスペクトなのかもしれませんが、いきなり犬からエイリアンの成体が出てくるのも解せません。
まだ青二才のフィンチャーの意見など通るはずもない環境で、とりあえず「らしい」世界観を構築しただけでも良しとしたい所です。
いずれ、本来形に近いと思われる完全版を観てみたいと思います。