何をウリにしていいか分からないのは分かります。
ラブ・コメと呼べる程の恋愛感情は(少なくとも当事者の二人には)ないし(萌えはある)、物理用語がイヤって程飛び交う割りにはSFと呼べる程の重さはありません。
だから、「サイエンス・フィクション・ラブ・コメディ」「ロックと物理で宇宙を作れ」「オチこぼれロッカーが天才少女の孤独を癒す」「真っ直ぐに恋した激しい青春」という乱発キャッチの全てが微妙に(一部激しく)的を外しています。
この視点の定まらなさが災いして興行メタコケ。もうちっと上手い宣伝できんかったんかい角川春樹?!
「神様のパズル」(2008年/三池崇史監督)
傷心旅行でインドに行ってしまった双子の弟の代返の為、物理のゼミに顔を出すハメになったロックな寿司職人見習い綿貫基一(市原隼人)と天才物理少女ホミズサラカ(谷村美月。※写真)。
二人が挑むのは「宇宙の創生」(!)。
激しく乱舞する物理用語に文系野郎は置いてきぼり必至ですが、エヴァの宗教用語と一緒でギミックと割り切ってしまえば無問題。
(それでもゼミ院生の「文系じゃあるまいし…」の一言はちょっとグッサリ)
サラカは、自分の裸エサにエロサイト立ち上げて、アクセスしてきた獣どものPCハックしてメモリ拝借(グリッド・コンピューティング?)、シミュレーションを展開します。
更に、関東近郊の電力供給システムを乗っ取って膨大なエネルギーを確保(ヤシマ作戦だ!)、宇宙創生まであと1クリック・・・。
新しい宇宙が現宇宙の外側に出来ればいいですが、内側に出来たら現宇宙が崩壊して消え去ってしまう・・かもしれない。
真面目に撮れば、「コンタクト」と並ぶ壮大なSF大作になった所ですが、そこは無軌道本舗三池崇史、「説得力って何?」な展開で一気に「うる星やつら」ワールドへ。
『死ぬ前に寿司喰う時間くらいあるだろ! 気合入れて握ったんだ! 喰ってけ!』
原作は第3回小松左京賞受賞作。脚本がNAKA雅MURAですから、相当アナーキーに改変されていると思います(笑)。
で、監督が平生「このまま撮ったら面白くないから変えろって書いてあるんですよ脚本に」とか言い垂れて平然としている三池ですから、後は推して知るべし。
駄目な人は絶対駄目だと思いますが、ノレる人には最高な映画です。