デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

贅肉を削いで締めて・・。 天使の眼、野獣の街

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足しても引いてもいけない絶妙なバランス。素晴らしい脚本です。

 

天使の眼、野獣の街
(2007年/ヤウ・ナイホイ監督)


ナイホイ監督は「ザ・ミッション」「PTU」などジョニー・トー作品の常連脚本家。

本作はトー総指揮の下での初監督作・・なのですが、何でしょう、この落ち着きはらった燻し銀の演出は。

香港警察vs連続強盗団と言ってしまえばありきたりですが、情報戦を駆使した双方の駆け引きが実にスリリング。

監視班、分析班、攻撃班というセクションの流れる様な連携が、いい感じにリズムを刻んで話に弾みをつけていきます。

監視班班長のサイモン・ヤム(コードネーム犬頭)、新人捜査官ケイト・ツイ(コードネーム子豚)、そして強盗団を率いるレオン・カーフェイ。

何が素晴らしいって、攻守双方の私生活を見事に割愛して捜査戦の攻防だけで90分走りきる潔さ(そのくせキャラはきちんと立っている)。

トー監督作に特有の“過剰なセンチメンタリズム”がスコーンと抜け落ちています。

で、まあ、皆よく喰う。尾行中も、打ち合わせ中も、換金中も、決行の最中ですら何か喰ってます(セブン・イレブン香港店には「グリル・チキン」がある!)。

“食い物が美味そうに見える映画は傑作”法則発動です。

映像の韻の踏み方も「お上手」。贅肉削ぎ落とした締りのいい佳作です。

※関連:「バナナの皮から始まる不幸の一夜。 PTU」
     →2008年8月12日

    「何故これが未公開? ファイヤーライン」
     →2009年9月3日

※参考:「え、鶴瓶? ブレイキング・ニュース」
     →2009年5月12日

    「脚本はない。ダンディズムがある。エグザイル-絆-」
     →2009年6月2日