公開当時、“トンデモSF”扱いされ、興行も批評も今ひとつだった本作ですが、何でしょうこの安心感は。ちゃんとした監督とちゃんとした役者。そうだよ、これが邦画だよ。
倉本聰の脚本は穴だらけ(一言一句変えてはならんという鬼ルール付き)ですが、喜八監督の豪腕な演出力と、居るだけで画面を圧する役者陣の演技力で、骨太なポリティカル・フィクションになっています。
岸田森と天本英世がツーショットで立っているだけで、もう・。
UFOを目撃した人間は血が青くなる・・という設定ですが、画面にはUFOも宇宙人も出てきません。目的も最後まで不明。
血が青いというだけの“マイノリティ”を国が、軍が、メディアが総力を挙げて駆除・殲滅する、地球規模の謀略がお話の骨子。
実に分かりやすい隠喩であり暗喩であるわけですが、公開から30年以上経った今日でもこの構文は十分有効です。
『10日後の事なんて分からないわ。あなたは誰かに聞かれてこう答えるわ。西田冴子?そんな女知らないって』
イエスがペトロに言った台詞をトレスして運命のクリスマスが・・(この時の竹下景子-西田冴子役-の美しさは半端無いです)。
余談ですが、「新世紀エヴァンゲリオン」の使徒識別波長“パターン:青(主モニター画面表記はBlood Type:Blue)”は、この映画の英語タイトルから。
場所や日付、役職・氏名のテロップ乱れ撃ちも喜八リスペクト(庵野監督が大ファンなんだそうで)。
今回改めて鑑賞したら、使用曲まで被ってました(笑)。
しかし、この作品に対して「叩き台としての意味もない」だの「パリのロケが冬でないのは怠慢だ」だの「テレビなら放送止めてくれと言う」だの言い垂れた倉本聰には本当にイラッとします。何様のつもりだよ。