デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

任侠と萌えを糾う魔性の言葉“叔父様”。 冬の華

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1978年-79年は「叔父様!」の年でした。

78年にはセーラー服姿の池上季実子が潤んだ瞳で「叔父様!」と微笑み、翌79年にはカリオストロ公国のクラリスが「叔父様!」と駆け寄ってまいりました。

任侠映画ファンからアニメオタクまでを一瞬で虜にし、妄想の世界に引きずり込んだ魔性の言葉「叔父様」。

その妄想の扉を開いたのは倉本聰でした。

「冬の華」(1978年/降旗康男監督)

関西系暴力団に組を売ろうとした兄貴分・松岡(池辺良)を殺して刑に服した加納秀次(高倉健)。松岡には当時3歳になる娘・洋子が。

加納は舎弟の田中邦衛を通じブラジルの叔父として洋子に援助を続け…。

そして14年後。出所した加納を待っていたのは、美しく成長した洋子(池上季実子)と関西との新たな抗争の火種でした。

チャイコフスキー(ピアノ・コンチェルト)、名曲喫茶、クロード・チアリ、シャガール、バイオリン、万年筆…。ヤクザ映画とは思えない小道具がこれでもか!と並びます。

哀愁の健さん×無垢な季実子=“萌え満開・妄想ヤクザ・ファンタジー”。

健さんで1本と言われたら、「新幹線大爆破」かこれですね、私は。

加納秀次という役名は健さんの当り役「昭和残侠伝」シリーズの花田秀次郎を思わせます。

そう言えば、健さんが初めて花田秀次郎を名乗ったシリーズ2作目「昭和残侠伝 唐獅子牡丹」は浮世の義理で斬った男の未亡人(と遺児)を影ながら支えるお話でした。

余談ですが、唐獅子牡丹で秀次郎が男を斬る時の台詞、

『勝負は運否天賦。どっちが斬られても恨みっこなし』は最高の斬り口上だと思います。

で、冒頭で秀次が手にかけるのが、残侠伝シリーズの相方・池辺。東映の作品ですから別に不思議な事ではありませんが、何か因縁めいた相似性を感じてしまいます。