デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

変態監督見っけ。 刑事マルティン・ベック

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ジャンク品とは言え、本物のヘリコプターを市街地に落とす・・しかも、それを真下から撮る(それも監督自ら)。

 

もう、それだけで価値ある一本です。

「刑事マルティン・ベック」(1976年/ボー・ウィデルベルイ監督)


ご存知マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーの警察小説<マルティン・ベック>シリーズ『唾棄すべき男』を映像化したスウェーデン映画。

前半のゆったり地味ぃな「なんでお前らそんなに動きが緩慢なんだ? スウェーデンって気圧低いのか?」な捜査シーンが、ライフル魔の登場で一変。

車両大破、群集騒然、フルートの小刻みなノイズが緊迫感アゲアゲ。

スウェーデンの映画事情は全く知らないのですが、ボー・ウィデルベルイって監督はかなりの変人(しかも実力者)のようです。

「ヘリの真下に行くのが怖いだと? 頼まん、俺が撮る!」

「本物の血じゃないと駄目なんだ。引きでヘルメットだから分からないって? いいからこの豚の血を含め!」

「高所恐怖症? 大丈夫大丈夫、じゃ、そこの梁渡って一番端行って伏せて」

「危険? 下に網張ってあるじゃん。 とお!(ジャンプ)・・な、大丈夫だろ」

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罵倒上等のハイ・テンションで、現場はかなりピリピリしていたようです(ちょっと「エクソシスト」の時のフリードキンを思わせますね)。

DVDの映像特典(関係者インタビュー集)では、監督が既に故人(97年に癌で死去)という事もあって、皆遠慮無く“天才だ”“大物だ”と持ち上げつつ、軽い憂さ晴らしをしているように見えました(笑)。

事件は派手ですが、刑事自体はスゲー地味。繰り返し眺めたい刑事ドラマの秀作です。