デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

蝦夷から帝都へ。 大怪獣バラン

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別冊宝島「怪獣学入門」によれば、自衛隊が自力で倒せた怪獣は僅か二種。

一種は熊襲の地に蘇ったラドン。そしてもう一種は蝦夷の山奥から帝都を目指した・・

「大怪獣バラン」(1958年/本多猪四郎監督)

一般的に「失敗作」の烙印を押されておりますが、捨て置けない“何か”が熱く滾っていてどうにも無視する事ができません。

東北の山中、北上川上流の“日本のチベット”と呼ばれる秘境の集落。

「婆羅陀魏山神」として奉られている湖の魔物(守り神?)は、中生代に棲息したバラノポータの生き残り、バランだった。

お話はバラン登場→自衛隊迎撃というパターンを場所を変えて繰り返すのみで実に平坦。

ありがちな人間ドラマを破綻限界まで排して、怪獣対自衛隊の攻防に当てるという「ブラック・ホーク・ダウン」形式です(褒めすぎだな・・)。

中央から遠く離れた民間伝承の宗教神が帝都を目指す。自衛隊も「我々には帝都防衛という使命がある」と力説。

熊襲ラドンが神々しいがまでの死に様を見せたのに対し、帝都侵攻を図ったバランはその先端を踏みしめた瞬間、岩盤掘削用の特殊火薬を飲み込んであえなく爆死という情けない最期を遂げます。

およそカタルシスと無縁の怪獣映画ですが、この“中央対地方”“科学対民間信仰の図式が妙に惹くんですね、私の心を。

そしてバランの造形の素晴らしさ。正に獣神な面構え。クリスタル・ビューティーな角と背びれ。シネスコ画面にも収まりきらない長く力強い尻尾。

既に「ラドン」「地球防衛軍」を総天然色で撮っているにも関わらず、敢えてモノクロというのも「南海の孤島」と対を成す「北の秘境」をいい感じに表しています(まあ、途中挿入される自衛隊の軍事教練記録とおぼしき映像を違和感無く繋げる為という気もいたしますが・・)。

写真上はVHSのジャケット。米国公開版は、ゴジラ同様、撮り足し編集されて全く別の映画になっている・・らしい。