「あなた達、一体何語が喋れるのよ?! 英語以外で!」
フランス人がフランス語を喋り、ドイツ人がドイツ語を喋り、アメリカ人は英語及び英語訛りのドイツ語(と大笑いなイタリア語)を喋る。
正にリアリズム。「七人の侍」の「1本の刀じゃ5人と斬れねえ」以来の衝撃。
しかし!史実は豪快にスルー&デストロイ。これは暴走する映画愛で歴史を変えようとしたタラの壮大な楽屋落ち映画です。
(2009年/クエンティン・タランティーノ監督)
“ナチスに両親を殺されたユダヤ人少女の復讐と、地道かつ残忍にナチ狩りを続けるユダヤ系アメリカ人部隊バスターズの極秘作戦が、ゲッペルス製作のプロパガンダ映画のプレミア試写会会場で交錯する”というストーリーが予告編からビタ一文伝わって来ず、全く食指が動かなかったのですが、観てびっくり。なんだ、面白いじゃないか。
冒頭いきなり「遥かなるアラモ」! タイトルが終わると「エリーゼのために」マカロニ・アレンジとも言うべき「復讐のガンマン」(エンニオ・モリコーネ)が!
タラのサントラ番長ぶりは今回も健在です。
第1章は、ナチのヤダヤ人ハンター、ハンス・ランダ大尉(クリストフ・ヴァルツ)と、ユダヤ人少女ショシャナ(メラニー・ロラン)の人物紹介&遺恨設定という重要シーン。
ここで素晴らしいのは、タラ映画の御印とも言うべき“ダラダラと無駄に長い会話シーン”がサスペンスとして機能している事。
このシーンに限らず、本作のダラダラ会話シーンはそ のほとんどがサスペンスの味付けとなっており、気の抜けない構成になっています。
史実なんか知った事か、とばかりに、比喩でも隠喩でも暗喩でもなく、映画でナチを倒す(殺す)・・タラにしか思いつかない展開です(映像化できるのもタラだけでしょう)。
重厚な演技に囲まれてブラピの飄々とした佇まいが実に浮いておりますが、このすっとぼけた存在感が本作のスパイスであり救いです。
名曲の嵐の中、「非情の標的」の美しくも悲しい旋律が個人的選曲イチオシ。
※参考:「デスプルーフinグラインドハウス」→2008年10月14日
「かっちょいいぞ、アマンダ・プラマー!
パルプ・フィクション」→2008年10月23日
「見せ場外しの美学。 レザボア・ドッグス」
→2009年3月27日
「今更ですが・・これはユマ・サーマンではない。
キル・ビル」→2009年9月20日
「出会いは激突!殺人拳。トゥルー・ロマンス」
→2010年4月1日