『海に行けば良かった…』
そうか、昔から言われている「山を甘く見ちゃいかん」という教えはこういう意味だったのか。
雪を蹴立てて全力進軍してくるナチス・ゾンビ。
このビジュアルの前には、穴だらけ(と言うかわざと脇を甘くしているだろ)の脚本も味わいの境地。
ジャンル映画のお約束完全網羅な逸品です。
「処刑山/デッド卍スノウ」
(2007年/トミー・ウィルコラ監督)
ここはノルウェー。医学生4人(ひとりは流血恐怖症、ひとりは映画オタク←Tシャツはブレインデッドだ!)とその彼女たち(ひとりは閉所恐怖症)が雪山のキャビンに。
いやあ、この設定だけで内容の想像がつきますよね。
車の中のダラダラした会話は「いけにえ」から続くお約束(だから、ここがタルいなどと言ってはいけない)。
ジモティーのおっさんが語る「ザ・フォッグ」+「八つ墓村」な“山の伝説”。
「最近の若いモンは(中略)、麓の村はナチに占領(中略)、奴ら終戦時に村の金品を強奪(中略)しかし村人が反撃して皆殺(中略)一部のナチがこの山に逃(以下略)」
いとも簡単にキャビンの床下から発見されるナチのお宝(え、これだけ?)。
そして現れるナチス・ゾンビ御一行様。
若者がお宝を横取りしようとしたから出てきた、という設定のようですが、であれば、オープニングで(妙に軽快にアレンジされた“ホール・オブ・ザ・マウンテン・キング”に乗って)殺されたお姉ちゃんは単に景気づけの犠牲者で殺され損って事になりますが、まあ、どうだっていいじゃないですか。
要は血で血を洗う一大殺戮戦の理由付けが(なんとなくでも)出来ればOKって事(いやホント、“スイッチ・オン!”って感じで映画が走り出します)。
どこかで観たシーン、台詞の洪水ですが、機関銃付スノーモービルと臓物クリフハンガーは「マチェーテ」より先(「マチェーテ」は2010年。原型のフェイク予告は本作と同年)。
ホラーのみならず、あらゆるジャンル映画に目配せした全方位お約束態勢が微笑ましい。
ナチス・ゾンビの得物が基本刃物で、銃火器を使わない(手榴弾は1回使う)のは、“予算”という大人の事情なのでしょう。
「アイアン・スカイ」の前哨戦に是非。
※参考:「英国的ゾンビとは?(しつこい?) ゾンビ映画15選」
→2012年5月11日