『人と関わりを持ってしまった獣の物語には不幸な結末が訪れる。獣には獣の物語があるのさ』
正直、実写のケルベロスシリーズは(レッドブル軍団の入場曲としてオールド・プロレスファンにはお馴染みの「紅い眼鏡」メインテーマを除いて)あまり好きではないのですが、これは別格。
「人狼 JIN-ROH(Blu-ray盤)」
(2000年/沖浦啓之監督)
米帝不参戦の第二次世界大戦に敗北し、ドイツ占領下(第二次ワイマール体制)にある日本を舞台にした押井守のライフワーク“もうひとつの戦後日本史”。
セクトと呼ばれる過激派集団の出現。国家警察への昇格を目論む自治体警察を牽制し、自衛隊の治安出動を回避するために結成された首都圏治安警察機構(通称:首都警)。
その特殊戦闘部隊、特機隊(ケルベロス)の隊員・伏が本作の主人公。
架空の世界観ではありますが、木造家屋の町並みや路面電車、デパートの屋上など、そこに息づいている空気は間違いなく「昭和37年」。
この雲気を支えているのが、CGを極力廃した手書きセル。投擲爆弾で吹き飛ぶ機動隊員の浮遊感とか素晴らしいです(本作と「オネアミスの翼」はセル画のひとつの頂点でしょう)。
で、もうひとつの魅力が声優陣。
巧いのか、下手なのか、ヘタウマなのか、やっぱり下手なのか。一聴しただけでは判断つきかねる微妙な演技(特にヒロイン圭役の武藤寿美)。
Blu-rayには英語吹替がついているので、洋画気分で観る事もできますが、無難に流れていく英語台詞ではもはや物足りなく感じてしまう自分が恐ろしい。
武藤須美のヘタウマジック炸裂です。
ドラマ後半は、公安を巻き込んでの内戦へ。
『猟師が獣を仕留めて終わるのは人間が書いた物語の中だけなのさ』
繰り返し挿入される赤頭巾ちゃんと狼の寓話が悲しく美しいビターな大人の童話です。
※余談ですが、週刊朝日「談」のブログ時評Asablo「第60回/内容もジャンルも充実の映画ブログ」の中で曼荼羅畑の名前が取り上げられておりました。嬉し恥ずかしでございます。