デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

実機も凄いが特撮も凄い。 加藤隼戦闘隊

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冒頭いきなり“撃ちてし止まむ”の文字。

続いて、陸軍省後援、情報局選定のテロップ。

戦意高揚のプロパガンダ映画であることは間違いありませんが、戦後民主主義と強制された自己批判で卑屈になった今の自虐的戦争映画に比べれば1万倍面白いです。

「加藤隼戦闘隊」(1944年/山本嘉次郎監督)

加藤建夫陸軍中佐(死後二階級特進して少佐)率いる大日本帝国陸軍、飛行第64戦隊(加藤隼戦闘隊)の活躍を追ったセミ・ドキュメンタリー。

なんせ戦時下に於ける陸軍バックアップ映画。一式戦「隼」を始め、九七式重爆撃機・同輸送機・戦闘機が一部を除いて全部実機。敵機も徴発した本物。

高射砲をものともしない隼の編隊の威容。マーケットガーデン作戦を思わせる規模でスマトラ島バレンバンに降下する陸軍第一挺進団(落下傘部隊)を30台のカメラで捕らえたシーンの美しさったら。

これをアシストする円谷英二の特撮がまた見事。

重爆隊によるラングーンのイギリス空軍飛行場絨毯爆撃シーンでは、きっちり骨格まで作り込まれた格納庫や地上施設のミニチュアが段階的に爆破され激しくリアル(しかも手前に避難するイギリス軍将校を写し込む念の入れよう)。

加藤建夫を演じるのは藤田進(最初に思いつくのが地球防衛軍のヤマオカ長官ってのは問題があ…いや、ない!)。

製作年度を考えればもっと「軍神」的扱いになってもいい所ですが、藤田の人懐っこい朴訥な演技のおかげで人間味溢るる英雄として描かれています。

今の時代に作られれば、長距離飛行可能な支援戦闘機としての隼のスペックや海軍の零戦との違いに言及するシーンが入るのではないかと思いますが、“知ってて当然”な時代なので割愛されているのがちと残念ではあります。

余談ですが、隼が夜間長距離飛行をしているシーンに細かく挿入されるテロップ(“疲労”“錯覚”“昏迷”“高度六千”“酸素欠乏”)の使い方は「エヴァ(特に旧劇場版「シト新生」の“暴走”“反撃”“脅威”“虐殺”“恐慌”“畏怖”“断末魔”)」の元ネタのように見えます。