人生の余裕残高がゼロになった待ったなしの五人組が、暴力団のアガリを強奪。しかし、世の中そんなに甘くない・・。
「GONIN[劇場公開版]」(1995年/石井隆監督)
お話自体は、人生どん詰まり→窮鼠猫を噛む的一発勝負→成功→報復→破滅という鉄板フォーマット。
あとはキャラ立ち次第なのですが、設定と描写がちょっと微妙。
特にモックン。ゲイを装って金持ちの同性愛者を釣っては脅すキレキャラの美青年、という設定なのですが、キレ具合が実に表層的で彼だけ芝居が浮いています。
主役である佐藤浩一に惹かれていく過程も曖昧で、せっかくのキスシーンも「へえ」の域を出ません(佐藤浩一にそっちのオーラが無いというのも敗因)。
リストラサラリーマン竹中直人はいつもよりは抑え気味(←褒めています)。マイホーム・パパだと思っていたら実は・・というシーンは今見てもなかなかに衝撃的(娘は栗山千明)。
パンチドランカー椎名桔平は言われなければ分からない無駄に凝った役作りで起用の甲斐無し(きっと内心、「俺の方が本木よりいい体している。あぁ尻出してぇ」と思っていた事でしょう)。
元汚職刑事・根津甚八は流石の存在感(元妻は薄幸な女演らせたら日本一な永島暎子)でしたが、結局主役陣より脇キャラの方が“いい感じ”になってしまいました。
筆頭は、ヒットマン・ビートたけしとその相棒兼愛人の木村一八。木村はたけしのゲイ設定の関係上記号的に存在している相方ですが、たけしにはホモ艶がありました。この頃のたけしは“滴っている”感があって実に魅力的。
個人的イチオシは大越組若頭を演じた鶴見辰吾。やさぐれた安定感が抜群です。
三池作品を見慣れてしまうと、全体的に“とってつけた”感の漂うホモ描写が不満ですが、軟弱な男がひとりも出てこない(誰にも媚びていない)、という点は高く評価します。