デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

表も裏も嘘。THE 4th KIND/フォース・カインド

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策士策に溺れた水死体。もうちっとフェイクとして振り切ってくれれば、評価はさておき、存在感だけばグッと増したと思うのですが。

 

THE 4th KINDフォース・カインド

(2009年/オラントゥンデ・オスサンミ監督)

 

アラスカの小都市ノームで起きた謎の怪異現象を実際のビデオ映像(関係者インタビュー含む)と再現映像で検証・・という触れ込みのフェイク・ドキュメンタリーです。

タイトル観て、「未知との遭遇」の原題“Close Encounters Of The 3rd Kind”を思い出した人ならあっさり“宇宙人モノ”と看過するでしょうが、実はそれもギミックで・・。

実際の映像も全てフェイク(特にUFOらしき光を捉えたパトカーの監視映像)という前提で、お話の骨子だけを見れば、単なる精神疾患ドラマです。

自己暗示による記憶の書き換え、催眠暗示による事実の捏造と外傷操作・・。

要するに「スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする」と「ブルード/怒りのメタファー」を足して「X-FILE」で包んだ“全部嘘”なホラ話(に見えます。私には)。

監督がどこまで意識して仕掛けているかは分かりませんが、例えば、キューブリックが「シャイニング」で幽霊の登場するシーンに必ず鏡を配して、合理的説明のつく可能性を残したような立ち居地で演出をしていたとしたら、大分評価は変わってきます。

“信じる、信じないはあなた次第”というキャッチがついていましたが、宇宙人の存在を信じる、信じないよりも、全てを合理的に説明するとしたらどのような真実が浮かび上がってくるのか、を考える方がよっぽど怖いと思います。

大女優(ミラ・ジョボ)が出てしまったが為にかえって安い作りになってしまいましたが、大学の映研が、偶然見つけたビデオテープに再現映像を加えた、という形にして地下流通(もしくはネット配信)させたらブレア並みの話題になったかもしれません。

色んな意味で“惜しい”作品です。

余談ですが、ミラ・ジョボが演じたタイラー博士を演じた(ややこしいな)女優さん(写真中左)は、見事な神経症患者顔(特殊メイク)でしたが、痩せて落ち窪んだギョロ眼が「シャイニング」のシェリー・デュバル(写真中右)っぽかったですねえ(オマージュ?)。

※参考:「その顔は反則だろ。特にシェリー。シャイニング」→2008年9月3日