『意味があるのか。記憶を無くした男の復讐に』
『奴が忘れても俺は約束したんだ。行くぞ』
ハリウッドでケツの毛まで抜かれてしまったウーさんに代わって心の男塾を開き続ける男、ジョニー・トー先生の新作です。
「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」
(2009年/ジョニー・トー監督)
「復仇」というシンプルなタイトルが散文詩に大変身(覚えられねえよ)。
今回のテーマは前回、前々回、前々前回・・(以下略)に引き続き“男の友情”。
パリでレストランを経営するコステロ(ジョニー・アリディ)は、マカオに暮らす娘一家が何者かに襲撃された事を知り、一路マカオへ。
娘婿・孫二人が惨殺され、娘も重態。娘から犯人の特徴を聞きだしたコステロは復讐を決意・・が、しかし、ここは異国。右も左も分からない。
ホテルに戻ると“偶然”にも仕事帰りの殺し屋3人組と遭遇。
この偶然をご都合主義と言う人がいますがとんでもない。じゃ、コステロが腕利きの殺し屋を探して奔走する過程を見たいか? どうでもいい。じゃ割愛。実に合理的。
殺し屋は、クワイ(アンソニー・ウォン)、チュウ(ラム・カートン)、フェイロク(ラム・シュー)といういつもの面々。
コステロが彼らに信用されるきっかけが、手作り料理と分解したハンドガンの目隠し組み立て競争というベタさ加減が素敵です。
夢の島に捨て置かれた自転車を4人が順番に後から撃って走らせる・・何とポエティックなシーンでしょう。
コステロも実は元殺し屋。しかし、頭部に受けた銃弾(まだ頭に残っている)が原因で記憶が少しずつ崩落。友が、家族が、やがては復讐そのものの記憶まで。
『あの人たちは私の知り合いなんだね?』
『そうよ。おじさんの友達・・親友よ』
コステロは海岸で祈る。『神よ、私に力を』
月光に照らされた海の向こうからゆっくりと記憶の波が打ち寄せる。復讐の決意と共に。
このシーンなんかほとんどファンタジー。笑うか、泣くか(もちろん泣いたさ)。