実は新しいアイディアなんかどこにもありません。
「ザ・フライ」と「第5惑星」を足して「シティ・オブ・ゴッド」で味付けして「ダークマン」と「ロボコップ」を振りかけた、そんな感じの代物です。
異星人を移民に見立てた着眼点と、ドキュメント映像と映画的映像をシームレスに繋いだ編集が斬新という事以外にコレと言って褒めるところはないのですが・・。
それでも推します、この映画。
異星人の巨大UFOがやってきた。ニューヨークでもワシントンでもない、ヨハネスブルグの上空に。
中には夥しい数のエイリアンが(後にその形状から“エビ”と呼称)。
侵略ではなく漂流。世界中が注視する中、南ア政府は異星人を移民として受け入れ、公営住宅とは名ばかりの隔離エリア「第9地区」を建造。
そして20年。第9地区はスラム化し、近隣住民とのいざこざも絶えず、政府は居住区の移転を決意、管理機関MNUが指揮に当たりますが・・。
主人公はこの強制移住プロジェクトの責任者に任命されたヴィカス(シャールト・コプリー)。
見るからに善人。 普通と平凡を煮〆た公務員かくあるべしなお役人。ちょっといいカッコがしたいという野心とも呼べぬ功名。妻を、両親を心から愛するミスター凡人。
移転勧告(法律上自前に告知してサインをもらわないといけない←異星人相手にお役所仕事という笑い所)の最中に謎の液体を浴びたヴィカスは肉体が徐々にエビ化。
ハエになるのも怖いですが、エビになるのもチビチビしちゃう怖さです。
まあ、立場が変わると世界も変わるというアプローチも決して新しいものではないですし、結局はアクション映画に収斂してしまうという展開ももう少しどうにかならなかったのか、とは思います。
でも、なんかあのラストカットにやられてしまいまして。
ちょっと「サイレント・ランニング」とか「シザーハンズ」のエンディングに近い匂いがするのですよ。
社会派的な要素もなくはないですが、もっとパーソナルなふれあいの映画なんだと思います。