SABU監督の「弾丸ランナー」が喰い足りないのは(コメディと呼ぶには弾け方が足りなさ過ぎるというのが一番ですが)、
“走るだけの映画に88分は長すぎる”からだと思います。
走る、逃げる、追うという絵柄は変化に富んでいるように見えますが、その動きに慣れてしまえば、実に退屈なアクションです(演出力がなければ尚更)。
全力疾走で走りきれる限界時間-35分-を示したのが、
「シャッフル」(1981年/石井聰亙-当時は總亙-監督)
原作は大友克洋の「RUN」。
自分を裏切った女(室井滋)を殺し、彼女をシャブ漬けにした組長を弾くために家を飛び出した男(中島陽典)と彼を張り込んでいた刑事(森達也)の逃走と追撃。
追跡シーンを撮る時は、追う者と追われる者を同時に捉えたカットを適宜挟んで、両者の距離感を観客に伝えるのが定石。24歳の石井に出来た当たり前の事がなぜハリウッドの奴らにはできんのだ(聞いてるか、スプレマシー&アルティメイタムのスタッフ)。
ただひたすら走る、走る。彩る音楽はヒカシュー。実にサイケ。
サイケついでに、いかにも自主映画な幻想シーン(ランナーズ・ハイ?)を挟んで流血のクライマックスへ。
幻想シーンで微笑む少女は武田久美子(「ハイティーン・ブギ」前年。ラストのクレジットタイトルが一番でかい)!
製作クレジットの中に阪本順治の名前もあったりで、良く見りゃ豪華なスタッフ&キャスト。
16mm、モノクロ(一部カラー)、35分。ここが全力疾走の臨界点。