デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

デストピアのビジュアルは理屈に勝る。 サロゲート

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まともなSFとして観ちゃうと北斗百裂拳並みの突っ込みが入りますが、一種のおとぎ話(もしくは単なる馬鹿映画)として観れば十分合格です。

サロゲート

(2009年/ジョナサン・ターミネーター3・モストウ監督)


どうしてもサロゲートサロゲート・マザー→松田聖子と脳内変換されて、整形聖子のレプリカが軍団で歌い踊る映画を想像してしまいますが違います(当たり前だ!)。

サロゲートとは攻殻機動隊で言う“リモート義体

脚の不自由な人でもサロゲートを使えば、外の世界の知覚・触覚などさまざまな経験値を自らの記憶として共有することができるという優れもの・・だったのですが。

じゃあ、面倒な事は全部サロゲートにやらせちゃえ! ついでに見た目も良くして理想の私に大変身よ!

という訳で、街は美男美女のサロゲートで溢れ、本人(オペレータ)は自宅で引き篭もりというリアル・セカンドライフ状態に。

そんなあり得ないけど微妙に被る近未来で起きた殺人事件(サロゲートの破壊を通じてオペレータも殺しちゃう)をFBI捜査官のブルース・ウィリスが追うというお話。

ブルースも当然捜査するのはサロゲート。髪の毛フサフサお肌ツルツルのブルース・ウィリスはとっても不気味(笑)。

ネットのアバターと本人が違うように、サロゲートとオペレータも違うというのが本作のミソ。

フサフサブルースが充電ボックスに入ると、ベッドから禿げジジイのブルースが起き上がるギャップの面白さ。

サロゲートは金髪姉ちゃんなのにオペレータはハゲデブオヤジの“なりすまし”も登場。

人は自分を隠し、引き篭もり、嘘で固めた社会を作る・・ユートピアだと思ったら人間性を喪失したデストピアだったという定番話ですが、好きですね、この感じ。

接続を遮断されたサロゲートが一斉にバタバタと倒れていくビジュアルが秀逸。

原子力発電所やジェットのパイロットはどうなるんだ的な非難もあるようですが、理屈よりもビジュアルを優先する事が映画的に正しい時もあります。

キャメロンの「アバター」と同時期に作られたとは到底信じがたい古さと地味さを醸し出していますが、90分足らずのランニング・タイムと相まって星新一ショートショートを思わせる掌編になっています。